文字通りの通訳じゃ崩壊することも!立場・文化・価値観のギャップを埋めて、架け橋となる通訳をするのが、通訳案内士です
こんにちは。英語全国通訳案内士・茶道裏千家準教授 マインドフルネスジャーニーズジャパン代表の服部花奈です。
時折させていただいている町家建築ツアーの通訳のお仕事で
衝撃的な事件がありまして
それを乗り越えた時のお話です。
本日のお客様は世界を股にかけてご活躍のドイツの建築家さんとその奥様
私の依頼主である一級建築士の先生が改修した古い町家を何軒か見学した後
先生のご自宅でもある、同じく先生が改修した素敵な町家で
プレゼンと質疑応答の時間のことでした。
先生がお客様からの質問にひととおり答えた後
逆に先生からお客様へ質問をなさいました。
「ドイツでもこのようなものを使いますか?」と。
するとお客様が
何か違和感のようなものを吐き出すかのように
こうおっしゃいました。
聞き間違いかと思いましたが、1回ならず3回も「クソ」と仰いました
「僕は世界中で建築をしているし
世界中の建築を見てきたけれど
日本の建築ってのはまるでクソみたいなものだ。
光を取り込まないから室内で電気が必要だし
断熱をしないから無駄な空調が必要だし
こんなに環境に悪い建築は
ドイツではありえない。」
聞き間違いかと思いましたが、
1回ならず3回くらい「クソ」やと仰いました。
省エネ大国ドイツの立場はわかる。でも日本の環境の中で受け継がれてきた伝統建築の美しさがある。先生のお立場もある。
省エネ大国ドイツの立場はわかります。
それまでのお話の中で
省エネにおいて世界のトップを走るドイツの技術のお話もたくさんありました。
でも日本の自然環境だからこそ受け継がれてきた伝統建築の美しさがあり
それを守ってきた先生のお立場もあります。
私は
お客様が言い放ったお言葉を、
先生がお気を悪くしないように和らげて
かーなーり和らげて訳し
それに対する先生のお言葉に対して
外国の方がわかりやすいように
日本と外国の立場のギャップを埋めるための説明を
(私が勝手に)付け加えて訳したところ
お客様のお顔が優しくなり
空気が柔らかくなりました。
「クソ三連発」から「日本を羨み、日本の伝統建築を賞賛する視点」へ
「日本の建具はドイツのもののように断熱はしないけれど
ドイツのものより200%美しいね」と。
その後は、ドイツの省エネ第一主義の立場を押し出すやりとりではなく、
ドイツのように省エネ基準が厳しくない日本だからこそ
こんなに美しい建築が成立するんだね、という
日本を羨み
日本の伝統建築を賞賛する視点でのコミュニケーションに変わっていきました。
ドイツでは日本のように
なるべく伝統工法で町家改修、というのはできないんだそうです。
伝統の維持より、環境優先の厳しい政策。
伝統工法で改修するのが許されているのは、国内でも数件しかないそうです。
通訳は、文字通り訳してるだけじゃないんです。機転を利かせて、思いを汲み取って、架け橋となっています。
立場・文化・価値観の違いのギャップを埋めて
機転を利かせてコミュニケーションをうまく進めて
日本の美しさを伝えていくのが通訳案内士の仕事だと思っています。
今回も、一瞬ヒヤッとしましたが
無事に日本の美しさが伝わって良かったです。
素敵なお仕事の機会を頂戴し
誠にありがとうございました。
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