村上淳という男



周知のとおりドリブンズのレギュラーシーズン敗退が決まり2年連続ファイナル進出を逃しMリーグの規定により4人のうち誰かが退団することになった。
キャラクターの認知度や人気、なにより近年の活躍を考えれば園田さんの退団は考えにくく村上さん、たろうさん、丸山さんの3人から退団することは多くの麻雀愛好家が予想していることだろう。かくいう私もこの3人から退団する選手が場合によっては複数人出るのではないかと思っている。

私はMリーグではドリブンズが好きだ。村上さんがいたからドリブンズに注目していたといっても過言ではないし初年度こそ苦戦したものの見事初代Mリーグ王者に輝き、翌年のチーム不振を背負いレギュラーシーズン敗退となるも孤軍奮闘した村上さんの直近2シーズンの不振はとても悲しかった。だから村上さんが退団ということも一ファンとしては覚悟している。私はドリブンズの選手の中では村上さんだけは自分が二十歳くらいの頃から注目していて当時は今のようなインターネットも普及しておらず麻雀メディアは映像配信を除けば近代麻雀>>>月間プロ麻雀>>>>>>>>>101マガジンといった時代だった。その中で媒体はもう覚えていないがオカルトバスターズという企画で村上淳・小林剛・鈴木たろうの3人がユニットを組んでコラムを連載していた。今でこそMリーガーとして活躍しトッププロとして知名度抜群の3人も当時は知る人ぞ知る存在であった。
当時の村上さんは当然何の実績もなく知名度もイマイチ、コバゴーさんが所属する麻将連合は当時代表の井出洋介さんの存在しか認知されていない印象のなかコバゴーさんは駆け出しといった感じで、たろうさんに至っては日本プロ麻雀棋士会という情報を得ることが困難な団体に所属していたためアマチュア愛好家にっては謎の存在だった。
しかしこの3人の切り口はとても斬新で当時の麻雀観としてはいわゆる「流れ論」が横行していて強者は独自にアレンジした流れ論を持っていた。
例えばこうだ。
開局して早々に親がリーチをかけてツモ「4000オール」。誰でも和了出来る簡単な満貫だ。こんなシーンは麻雀をやっていればよく見かける光景だ。
次局1本場に親の端牌の第一打を南家がリャンメンチー。後ろ見すると現状役の欠片もない。ドラが翻牌であれば牽制にもなるかと思いきやそういうことでもない。どうやら好調な親のツモスジを食い取ろうという狙いだそうだ。さらに好牌を食い取ったと見るやこれ見よがしにツモ切って見せる。もはや何らかの和了を目指すというよりは「親の嫌がらせをしてますよ」とまるで見えない何かを操作してますよと言わんばかりに中張牌をツモ切る。
当時はフリーに通う客の大半が手出しツモ切りなんぞはおかまいなし、ましてやツモスジを気にする人は一部の強者といった環境で「ほーん、なるほど。そんな戦術もあるんか・・・」と妙に納得した気になったものの時折見かける強者同士の交わす理論にはついていけず麻雀が強くなりたいという向上心だけはあった私は疎外感に満ち溢れていた。
そんな時に彗星の如く現れたオカルトバスターズの中に村上淳がいたのだが古株の強者にはオカルトバスターズの麻雀観は受け入れられず一部のプロでさえ村上さんを酷評する声を少なからず耳にしたこともあった。

その数年後、村上さんは最高位戦のAリーグに上がり更に決定戦に進む。
29期最高位決定戦。近代麻雀の付録DVDで初めてタイトル戦の決勝の模様が映像化された。尾崎公太さん(既に退会済)が最年少で最高位を戴冠した決勝に村上さんはいた。
その後も村上さんはタイトルに恵まれないながらも地道に活動し35期最高位決定戦に進出。タイトル戦決勝の終盤17~20回戦の模様がDVD化された。(ニコ生の配信が始まったのもこの時期だったかな?)
対局映像を振り返りながら対局者が持ち回りで解説をする内容で近代麻雀の付録DVDでは佐藤崇さんが解説を務めた回で村上さんのことを「門前の手数が多い打ち手」と評した。解説の佐藤さんも最高位戦ルールはとにかくリーチが強いと解説していて決勝メンツの飯田正人さん・水巻渉さん・佐藤崇さん・村上さんの中では村上さんが一番真っ直ぐリーチ手順を踏んでいた。余剰牌は翻牌から切る、ペンチャンはめったに外さない、勝負手はヤミテンで満貫あってもリーチ、恐らくこの辺のスタイルがリーチ超人の異名をもたらしたんではないだろうかと勝手に推測している。こうして35期最高位を戴冠した村上さんに一層興味を持った私は東京に行く用事を見つけて村上さんのゲスト店へ行ってみようと決意した。

羽田空港に着いたその日は運よく村上さんは川崎の某店にゲストとして勤務している情報を得ていた私は横浜のホテルのチェックインを後回しにして大きい荷物を抱えたまま空港から真っ直ぐその店に駆け付けた。すると驚くことに雨降りとはいえ14時頃にもかかわらず店内には従業員しかおらず卓が立っていない。当時は女流ゲストが集客の最短ルートだったんだろう。とにかく私は村上さんを独り占めすることとなり従業員2入りでゲームスタートした。一ゲーム目はテンパイすらままならず焼き鳥ラス。村上さんも焼き鳥3着。ただ、村上さんはその日体調が悪かったらしくふらふらだった。1回だけ抜けて休憩させてほしいということで店内には私と従業員3名しかいなくなった。妙な光景だ。私は今日は仕方ないかなと思い適当に遊んだらホテルに移動しようと考えていたところ、体調不良のはずの村上さんが本当に半荘1回の休憩で戻ってきた。従業員に心配されていたが「いや、折角遠くから来てくれたんで麻雀しましょう」と私に言ってくれた。その日は体調と麻雀は連動しないと村上さんは言っていたけどリーチ超人の欠片も見えずズブズブに沈んで行くだけの村上さんはカラ元気で明るく振舞っていた。私にはそれでもう十分だった。
翌年も東京に用事が出来たので村上さんのゲスト情報を調べてスケジュールを調整した。当時の村上さんは某店のゲストに頻繁に入っていたのでスケジュール調整は比較的簡単だった。
村上さんの追っかけ活動での対戦成績は密かに勝ち越している。だからと言って俺つえーなんて言う気もないし単なる密かな思い出だ。

私は麻雀と人間性は掛け合わせると相性が悪い人がいると思っていて、ある人物の人間性は好きだけど麻雀は一緒にやりたくない人って不思議と存在することがあると思っている。逆もしかり。それどころか人間性がイヤな場合は麻雀を認めることは容易でないだろう。

私は村上さんの上っ面しか知らないけど麻雀に真摯で不器用な人間だと思っている。Twitterではしばしば叩かれてるけどそんな悪いことしてないと思う。昔から正直過ぎて何かのイベントのゲストで年収とかも答えてたくらいだ。
Mリーグの対局を見てマナ悪だと言われていることもあるがそんなに悪いことしてるだろうか。

ため息が不快→片山まさゆき先生の作品でモデルとして出ていると「ブフーブフー」と興奮のあまり荒い息遣いの描写があるけど、対局に興奮している鼻息は昔はあったかもしれないけど、今はどちらかというと対局の際に冷静に努めるために深呼吸をしているように見受けられる。本人が言っていたように慢性鼻炎でため息のように聞こえているだけで決して対局者や視聴者に不快感を与えるためにため息をしているわけではないと思う。巷のフリーでたまに見かける同卓のメンツに呆れたため息と一緒にされてはあまりに可哀相だ。

長考が多い→対局で拾う情報が多ければ多いほど整理に時間がかかるので打ち手によっては「拾いきれない情報は無視する」ことも時には必要かもしれないしむしろその方が合理的だろう。村上さんは恐らく「絶対的に見えない情報があるからこそ目に見えてる情報は全部拾いたい」と考える打ち手なんだと思う。前者の方が打ち手の負担が減らせることは間違いないけど村上さんは勝率が少しでも上がるなら拾える情報は見逃したくないと考えて、その情報は自分の中で言語化して整理したいと考えてるんだと思う。視聴者目線で映えることよりも勝ってファンに喜んでもらいたいと願う姿勢がいけないことだろうか。誤解しているファンも多いと思うので村上さんの書籍を一度読んでもらいたい。

強打が多い→クールな選手に比べると強打するシーンは見かけるかもしれない。ひいき目だけど最近だと本人は視聴者のこういう声を気にしてかなり気を付けているように私には感じられる。

三味線?→そんなシーンは見たことないが具体例があれば逆に聞きたい。

村上さんは正直な性格故誤解を受けやすい。邪推を生みやすい発言からとんでもない誤解になりやがてアンチになっているMリーグファンもいるだろうと思う。なかには極論すれば叩く理由があれば何だっていいという人もいるかもしれない。先日の近代麻雀の記事の件も成績不振からくる解雇は覚悟しているという前提で正直な気持ちを述べているだけなのに自分は妻帯者だから見逃してほしい、解雇するのは独身の人にしてくれといった主旨の発言と誤解されてしまった。
個人的には村上さんを叩く雰囲気を作った一因である著名人の影響が少なからずあると感じているが、ここ最近はドリブンズ逆風の環境が多いと思う。
ほとんどが選手に不利な誤解を受けることが多いように感じられる。越山監督をバッシングする人も結構いるだろう。これについて今の私はちょっと違う思いがある。丸山さんの出場機会の少なさについては監督本人の見解はわからないが彼女の力量が育成枠から抜けきれていないだけの話ではないかという面もあるんだと思う。元々中長期的スパンで育成しようと入団させたところに2年連続ファイナルを逃すと選手入れ替えのレギュレーションが追加されてしまい計算が狂った側面もあるんだと思う。負けてからそこを愚痴るのは確かに格好良くはないが越山監督は選ぶからには不遇な麻雀プロの人生を背負うつもりでマネジメントしていたところで突然のレギュレーション追加はある意味ではハシゴを外された思いがあったのではないだろうか。
これは私の勝手な推測だが今回レギュレーションに従って選手としては一旦離れることになっても何らかの役割を与えてスポンサー企業のメンバーとして在籍するということもあるんじゃないかと期待している。越山監督がGMになり村上さんが監督とかね。
本来なら選手一人一人がMリーガーというキャリアを通じてマネタイズのノウハウや麻雀プロ全体の地位を向上させたい狙いもMリーグ発足当初から藤田社長としてはあったと思うから選手に拘らずとも活躍出来るスター選手になってほしくて一人でも多くMリーガーを経験してもらいたいんだと思ったりする。

まだまだ書きたいことがあるが、まとまりのない駄文になってしまったのでひとまずこのへんで。
noteの使い方難しいな。エディタを使いこなせるようになりたい。

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