続・村上淳という男
初投稿の記事に思いのほか反響がありとても嬉しく思います。
コメントくれた方、リツイートやいいねしてくれた方ありがとうございます。読み返してみるともう少し深堀しても良い部分や補足が必要な部分もあったので反省点として次回以降に活かしたいと思います。
10代の頃から私は麻雀の強さとは何なのかよくわからないまま、それでもひたすら麻雀が強くなりたいと願った青春時代に麻雀プロに憧れを抱いていたこともありました。田舎育ちの私には麻雀の世界は無頼の集まりでどうやって生活していくのか想像もつかず当時の放送対局開始当初なんて小手返ししつつタバコの煙をモンモンとさせながら捨て牌なんて6枚切りどころか10枚切りもザラでした。周囲の麻雀強者と評判の打ち手もまたアンダーグラウンドな世界に身を置く人が少なくなく、麻雀を生業とするビジョンがどうしても描くことが出来なかった私は麻雀は趣味の範囲に留めようと思いなおし無難に就職しました。
当時から「流れ」は存在するか否かの論戦は繰り広げられていました。SNSもない時代なので誌面上で支持派と反対派の論戦やアマチュア同士での勢力争いといった感じで当時の流れ論者の勢力は凄まじく身近な雀友やベテラン愛好家の多くが流れ論を支持しており、そこに独自の理論や戦術をアレンジしていました。地方により異なるかもしれませんが、ある者は「状態」というワードを用いたりある者は「牌勢」と表現したり様々な持論が展開されていたのです。そのため肝心の「流れ」の本質が語られることはなく結果論にうまくこじつけて自身の麻雀観を展開する人が多かったように思います。「流れ」の定義がはっきりしないので何も言えないという意見もありました。雀鬼でおなじみ桜井章一さんのようなその頃に活躍した流れ論第一人者に20年間無敗のキャッチフレーズに憧れ彼の書籍を読み漁り「アヤ牌」や「好牌をツモるリズム」等の素人には真似できない技に感銘を受けて巷のフリーで一人で勝手に雀鬼流麻雀に明け暮れた時代もありました。テンパイするまでドラは切らない。第一打に字牌は切らない、でもどうしても切る牌がなければたまには切るくらいのバランスで雀鬼流というか雀鬼風の麻雀に落ち着きました。そして次第に飽きてやめました。雀鬼流についても書きたいことがいろいろあるので機会があればいずれ。
結局「流れ」とは何なのか?阿佐田哲也さんをはじめいろんな書籍を読み漁った結果、当時の支持派の見解を私はこう理解してます。「流れはあると思う。私には見えないが超一流の打ち手には見える何かである。それはツキの存在と密接に関係していてツキの状態に合わせて手筋を駆使することで勝率を上げる戦術」こんな感じかなと思うがこれが合ってたとしても私には見えないから全く意味がないのである。よくわからないままとある月刊プロ麻雀の記事の中で麻将連合の須藤プロが「流れ自体はあると思う。ただしそれは未来の結果を約束するものではない。」といった主旨のコメントをされていて私はそのコメントにとてもスッと心に入っていく感覚を覚えました。「流れ」を肯定しなくても麻雀は強くなれると思えるきっかけでもありました。そんな頃にとある誌面で見かけたオカルトバスターズのメンバー達。確率や期待値という概念が初めて世に現れて凡人の目には見えない曖昧な感覚よりも努力次第で得ることができる理の重要性を説くオカルトバスターズ。その中に村上さんがいたわけですが、あの日あの時あの場所で君と出会わなければ・・・ラブストーリーは突然に始まるわけはなくもしかしたら私も麻雀プロの世界に身を置いていた未来を描けてたかもしれません。
村上さんは銀玉親方でおなじみ山崎一夫さんが経営する雀荘たぬでの勤務成績をたぬブログに定期的にアップしていて圧倒的な成績を残していました。たぬだけでなく自身の麻雀の成績を全て記録にしたノートは膨大な数になるでしょう。デジタルを自称する村上さんでありながらこういった極めてアナログな作業を地道に続けることが出来る誠実な人であること、負けても真摯に受け止め愚痴らず言い訳をしない。どんな問いかけにも包み隠さず正直に答える人柄がもっと広く世間に知られることが出来たならつまらない誤解もなくなることは間違いないと思います。麻雀は負けた数だけ優しくなれる。大体7割以上は負けるゲームですからトッププロのこなしたゲーム数を思うと負けた経験はハンパじゃないですよね。叩くよりも称え合う方が気持ち良いと思いませんか。
35期最高位を戴冠した村上さんは同時期に別のタイトルも獲得し三冠王となり一躍時の人となりました。あの頃の村上さんは最高位決定戦で戦った佐藤崇さんが「門前の手数が多い」と評したわけですが佐藤崇さん曰く「本当にリーチが多くて和了れないって言いながらリーチする時もありますからね(笑)」と解説で冗談を交えて仰ってました。門前で先手を取る戦略は今日の寿人さんや前原さんでお馴染みガラクタリーチと本手を混ぜることで同卓者にとって脅威であり自身のスタイルで勝つために必死に研究した成果と言えるでしょう。ただ、門前主体の麻雀はツモが噛み合わない場合にかなり苦戦を強いられます。ディフェンディングとして臨んだ翌年の36期は元パイレーツの石橋さんが村上さんのスタイルとは真逆な狂気の副露とも言える鳴きを駆使して石橋さんペースのレース展開でした。レース終盤には超門前派の曽木達志さんが門前高打点でぶつけていき最終戦は石橋さんと曽木さんの着順勝負のマッチレースでした。19回戦トップを取るも残念ながら優勝争いにはちょっと厳しい位置で善戦むなしく村上さんはタイトルを失いましたが一緒に戦った佐藤聖誠さんの両名も本当に素晴らしい闘牌でした。当時石橋さんも曽木さんもゲスト情報がなかったので私はすかさず佐藤聖誠さんの追っかけも決行することになります(笑)。
この頃にはニコ生のスリアロチャンネルが映像対局の主流になり当時はパズドラでお馴染みマックスむらいとスリアロチャンネルに夢中でした。四神降臨は名企画でしたね。
39期最高位決定戦で再び最高位に輝くことになりますが私は村上さんの麻雀の変化を感じていました。これまでの門前の手数で勝負するスタイルから先手を取られても押し返す価値のある手作り、先手に拘らず一発で勝負を決めにいく重い手作りといった、それはまるで上段の構えから袈裟懸けで一発で切り抜く侍のようなスタイルになっていました。数年の間に最高位戦のトレンドの変化や村上シフトがAリーグにあったのかもしれません。
決定戦の終盤では牌姿や細かい状況は忘れましたが佐藤聖誠さんとのマッチレースのなか佐藤さんリードの局面でドラ1の一向聴から辺3pのターツを外し6677888pの5678p待ちでリーチ。67pツモなら三暗刻の6p(だったかな?)を一発ツモ。30-60で私の主観では結局これが決まり手になり見事最高位返り咲き。ついでにこの年は三冠王のオマケつき。
Mリーグでも決め手は残りツモ回数が少なくても待ちが明らかに少なくても惜しげもなくリーチしてツモった姿を何度も披露した村上さんはベースに最高位戦Aリーグで勝ち抜く為にブラッシュアップし続ける麻雀にひたむきな姿勢がリーチ超人を生み出したと私は思います。
麻雀マニアな私は村上さんの追っかけ活動で初めて同卓した時にあまり会話はしていません。なぜなら牌で語り合ったから…と言いたいところですが私の技量が足らず人見知りでほぼ会話らしい会話が出来ませんでした。それでも同卓してくれた従業員の方が会話をリードしてくれて4人でワイワイした感じでゲームが進行しましたが2名の従業員は会話だけでなく代わる代わる頻繁に「ツモ」という発声を混ぜながら麻雀もどんどんリードして私と村上さんは焼き鳥ラス3着となったのでした。
私「あ〜何もさせてもらえなかった…🥺」
村上さん「私も…🥺」
村上さんとはこんな会話くらいしかしてない気がします。
後に佐藤聖誠さんの勤務先にお邪魔したこともありとても丁寧に接客してくれたことも忘れることの出来ない思い出です。残念ながら佐藤さんは退会されてしまいましたが他にも最高位戦プロとは縁があったこともあり最高位戦に対する私の評価はかなり高いです。ドリブンズ贔屓はこの辺の感情もあると思います。
村上さんはここ数年、特にこの2年くらいはMリーグでも苦戦し続けたわけですが赤アリ麻雀が苦手だからと決めつけるのは違うと思います。キンマの記事にある通りレギュラーシーズンのスパンにおいて勝負を先送りにするか自身の手牌価値においてリスクの方が大きいことを承知で勝負するかの判断が少しズレたことは敗因の一つかもしれません。また、今シーズンのあの配牌とツモの組み合わせでは他の誰が打っても負けていたとも思います。Mリーグルールでは赤ドラのない愚形残りの手牌での立ち回りは門前派の打ち手の永遠の課題ではないでしょうか。じゃあそんな時はさっさと捌けばいいじゃん?なんて意見が出そうですが捌き手と重い手作りのバランスは難しくこれまで培ってきた長所である門前のバランスを崩すことにもなりかねないと思います。ドリブンズの選手は赤ドラがない愚形の手牌の場合は比較的七対子や一色手等の手役を狙う傾向にありますが赤ドラ所有のスピード重視の他家とではどうしても不利な勝負になります。盤面の情報を拾えるがために一巡踏み込めないシーンがあったように見えました。自身の手牌に価値がない、相対的に他家に反応してしまう。そんな悪循環のなか今シーズンは村上さんもたろうさんも後手に回らざるを得ない局面が多かったように思います。
そうはいっても負けは負け。物語の主人公に挫折はつきものです。来期のドリブンズメンバーに誰が選ばれても麻雀は終わりません。村上さんの麻雀人生もまだまだ続きます。前回の記事には何のネームバリューもない私の駄文にとんでもない反響があり改めて村上さんの人徳を感じました。どうか村上さんには心無いコメントに負けないでほしいです。村上さんには素敵なファンが数え切れないくらいいることも忘れないでほしいです。
本当はドリブンズメンバー一人一人に思うことがあるんですが今回も20年以上注目し続けた村上さんにフォーカスしてみました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?