K.385のその個性的な開始
K.385の開始12小節間は「前奏」なのだということに気がつくかどうかでこの音楽のあり方が見えてくる。逆に言えばこの冒頭の形がよく分かりにくいのだ。
単純に聞いていると豪華で軽快なよくある「らしい」音楽なのだが、この冒頭の形は13小節め以降とは矛盾してしまう。音符を数えて並べるだけならこの問題には突き当らない。だが、形を見つけようとすると冒頭の位置と13小節めの位置は合致しがたいのだ。
そもそも2小節1拍めのティンパニがどのように効果するのかも掴めないと音楽の形は見えない。
そういう点でとても付き合い難い曲だった。
だが、「テンポ変更を伴わない緩急対比」という古典派的な手法を知るとこれらの問題が納得いく形になる。
冒頭12小節間は2つの小節を分母として動き、しかも最初の2つの小節はallegro vivace的な「アウフタクト」の位置にあるのが特徴だ。
1 2|①3 4 ②5 6 ③7 8 ④9 10 ⑤11 12 | ①13…
こうやって13小節めを導く。主部として13小節目から始まる音楽はひとつの小節を分母とすることで、前奏部と対比的な形になる。主部は途中5拍子拍節を挿入しながら基本6拍子で走り出す。その壮麗さはこの6拍子によるものなのだろう。
提示部反復が取り消しされたこともこの形式的な問題に由来する。提示部終了の拍節では冒頭の形と矛盾する、あるいはやや無理があると判断したのだろう。
こうやって形に気がついてみるとこの第1楽章はなかなか個性的に思えてくる。
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