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ウルトラマン第20話 / 「恐怖のルート87」を見ました。 #ウルトラサブスク

100文字短評

交通事故で亡くなった少年の幽霊による復讐のお話(か)。ヒドラの存在をどう解釈するか、無差別に車を襲うことをどう受け止めるかどうかで評価は変わりそう。個人的にはもう少し良い演出もあったような…。

伊豆・大室山で怪現象が発生した翌日、科特隊本部に現れた一人の少年。彼は、大室山公園の高原竜ヒドラが暴れるとフジ隊員に告げて去っていく。科特隊が大室山近辺を調査する一方、少年の身元が判明するが、驚くべきことに少年は半年前に交通事故で死亡していた。そして少年の警告通り、ヒドラが姿を現した!

監督:樋口祐三

出演:黒部進

出演:桜井浩子

出演:小林昭二

出演:石井伊吉

出演:二瓶正也

特殊技術:高野宏一

脚本:金城哲夫

(C)円谷プロ

ウルトラマン第20話 / 「恐怖のルート87」 TSUBURAYA IMAGINATION
より)

感想

今回のお話は、まず時代背景を知っていた方がいいかなと思いました。

交通戦争(こうつうせんそう)とは、昭和30年代(1955年 - 1964年)以降、日本における交通事故死者数の水準が日清戦争での日本側の戦死者数(2年間で1万7282人)を上回る勢いで増加したことから、この状況は一種の「戦争状態」であるとして付けられた名称である。

交通戦争- Wikipedia
より)

初代ウルトラマンが放映された1960年代は、「交通戦争」と呼ばれた時代です。
この頃の日本は、増加する交通事故により子供を含む多くの人間が犠牲になり、社会問題になっていました。
今回登場する怪獣は、そんな時代の犠牲者、交通事故で不運にも命を落とした少年の化身とも呼べる怪獣、高原竜ヒドラです。


そう言えば早着替え全然見なくなっていた

劇中世界も夏に入っていたのか、科特隊の青服からオレンジ服への早着替え、そう言えばいつの間にか全然見なくなっていました。少し残念です。
今回からナレーターも替わっていましたよ。

物語は伊豆・大室山の怪現象から始まります。
山が蛍光灯のように突然光り出したのです。

……
確かに怪現象ではありますけど、生物を生きたまま液体状にして保管出来てしまう謎テクノロジー二次元の物が三次元化して生き物になってしまう現象とか起きる世界ですし、別に山が少々光るくらい驚くことでもないはずです。
しかし科特隊はクソ真面目で、早速怪現象の起きた大室山公園に、ムラマツキャップ、ハヤタ隊員、アラシ隊員が向かいます。
うーん、やはり日本人、仕事人間だなぁ…。

ザル過ぎる科特隊の警備体制!!……と思いきや

一方科特隊本部に突然お客様がやってきます。
不思議な少年で、

「大室山公園の高原竜ヒドラが暴れるよ。早くしないと大変なことになるよ」

不思議な少年

と言う謎の言葉だけ残して消えてしまうのです。
不思議なことに入れ違いで入室したはずのイデ隊員は「誰にも会わなかった」と。
……ウルトラマンは、幽霊も存在する世界なのか……!

鬱蒼とした森が枯れてしまう怪異

怪現象が起きた大室山公園を調査していた科特隊は、この地で起きている異変の説明を受けます。
半年前から大室山の木が急に枯れ始め、鬱蒼とした森が禿げ山になってしまったと。
ただならぬ事態です。

急に暴れ出すラクダ
異変の影響なのか落ち着かない動物達

異変は山だけに留まらず、公園内のラクダが暴れて人が怪我をしたり、動物達が何かを怖がっているのか、落ち着かず、気が荒れ、叫び出すといった映像が結構長く続きます。

これはメタ的な、個人的な想像で、脱線なのですが、1964年東京オリンピックがきっかけとなり、テレビの普及が急速に進んだのが初代ウルトラマンの時代ですし、お茶の間の子供達のために動物さんの映像を多めに流したんじゃないかなとも私は思います。

不思議な少年は半年前に死んでいた…。

科特隊は、不思議な少年が残した警告の言葉をヒントに調査を開始し、この少年は大室山公園に立つ石像、高原竜ヒドラをデザインした東京の小学生、ムトウ・アキラだと判明するのですが、なんと半年前に国道87号線で交通事故、ひき逃げにあって亡くなっていたと少年ホームの職員から明かされます。


高原竜ヒドラ出現

夜間、異変の正体、怪獣・高原竜ヒドラが大室山から出現します。
このヒドラは国道87号線で次々と車を狙っては襲っていきます。

……少年の魂がヒドラに乗り移り、憎き自動車を襲っているのでは?

ハヤタ隊員はそう考えるのですが、罪のない運転手を無差別に襲うヒドラを野放しにする訳にもいかず、科特隊はヒドラ撃退作戦、ウルトラ作戦第二号に乗り出します。

最終的に、ウルトラマンがスペシウム光線でヒドラを倒そうとした時、フジ隊員が「ウルトラマン、ヒドラを殺してはいけないわ!」と叫んだことで、ウルトラマンは止めを刺さず、ヒドラは何処かへ飛び去っていきます。

……ウルトラマンや科特隊が怪獣を倒さない、ましてやそのまま逃がすというのは異例なことではないでしょうか?
ネットのレビューを見ても、そこが釈然としないと言う人や少年のこれは逆恨みであって、罪のない運転手まで無差別に襲うことは間違っているのでは?と気になっている人も多いようです。

私も最初はそんな解釈だったのですが、もしもムトウ・アキラ少年は、自動車への復讐の怨念だけで凝り固まっていた亡霊のような存在なら、

「大室山公園の高原竜ヒドラが暴れるよ。早くしないと大変なことになるよ

ムトウ・アキラ少年

とわざわざ科特隊本部に警告しに来るでしょうか?
私はしないと思います。

「白鷺は乙女の化身だという伝説があるが、このヒドラも自動車事故で不幸な死を遂げた多くの少年たちの化身なのかもしれない」

ムラマツキャップ

ムラマツキャップの台詞を頼りに考察すれば、恐らくヒドラとは、ムトウ・アキラ少年の魂だけではなく、自動車事故で不幸な死を遂げた多くの少年たちの魂や怨念と呼ばれるものの集合体ではないでしょうか?

ゴジラで言えば映画『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』に登場する個体のゴジラは、太平洋戦争の戦没者・犠牲者の意識の集合体、残留思念集合体だとされますが、恐らくヒドラとはあののようなものなのだと思います。


恐らく、ムトウ・アキラ少年(ら)の魂も、自動車に復讐したい意識と、いくら自動車で自分が殺されたからと言って罪のない自動車を襲う復讐だなんて間違っているという意識の内部対立、良心の呵責があったのでしょう。

そして自身の復讐を止めたいムトウ・アキラ少年の魂の一側面が科特隊本部に現れて、あのような警告を発したのではないでしょうか?
僕を止めてくれ、と。

大室山公園の異変では、山の木々が枯れるとか動物達が怯えるというただならぬ描写、おどろおどろしい描写が結構多めだったことを見ても、高原竜ヒドラは純粋な善や被害者と呼べる存在、描き方だとは私にはちょっと思えませんし。

総評

ウルトラマン第20話 / 「恐怖のルート87」、交通戦争と呼ばれた時代、交通事故で亡くなった少年の幽霊による復讐の話を取り上げた回でした。
ヒドラの存在をどう解釈するか、無差別に車を襲うことをどう受け止めるかどうかで評価はかなり変わりそうです。

個人的にはもう少し良い演出もあったかなぁ、と。
自分をひき逃げしていった車だけ狙うとか、危ない運転をしてる車だけ狙うとかね。
ただ語りすぎないところがまたいいのかもしれない。

それに、初代ウルトラマンは視聴率40%越えのお化けコンテンツ、国民的作品だった訳でして。

交通戦争の時代、お茶の間には、交通事故で我が子や兄弟を失った方々もいたのでしょうし、交通事故で命を奪われた少年の化身の怪獣をウルトラマンが倒してしまってはいけないよな、と思います。

本日のお気に入りの台詞

「ウルトラマン、ヒドラを殺してはいけないわ!」

「ウルトラマン、ヒドラを殺してはいけないわ!」

★布教

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