躁鬱からの書字障害デビュー

気がついたら字が書けなくなっていた。そして、まだ書く能力は戻らない。時期としては、躁が終わって鬱になりはじめの頃だろうか。
私は発達性ディスレクシアではないので書けないということには全く馴染みがなく、気づいた時にはかなり動揺した。だんだん書けなくなっていったのか、突然書けなくなったのかはよくわからない。ある時職場でノートを取ろうと思ったら、すごい勢いで間違えるようになっていたのだ。しばらくパソコンで打つことばかりだだったので、自分がそんなことになっているとは知らなかった。びっくりはしたが、まあ元気になったら治るよね、とお気楽に構えていたのが一年と少し前。
その後鬱が良くなって、休んでいた仕事に復帰して、だんだん元気に働けるようになって、それでもまだ手書きで文章を書くことは難しいままだ。根本的に元に戻るような気もしない。ガーン。
けれど、少しずつ受け入れる気持ちになってきたのと、対策を覚えて簡単なことは書けるようになったので、現時点での症状と対策を記録しておく。
※以下は一般論ではなく、一患者の体験談です。

◎症状
もともと悪筆で漢字が苦手だったため、字が汚くなったのと漢字が書けなくなったのはノーカンにする。主観的にはどちらも大変悪化した。
これらに加えて、下に書いてあるような異質な間違い方をするようになった。ひどいときは三文字に一回、マシなときも1、2文に一回程度は起こる。文章を完成できないことも多い。
書き間違いはアルファベットでもたまに起こるが、日本語よりはややマシな印象だ。

①音の混乱
意味の通らない(あるいは違う)、似た音に置き換わってしまう。主にひらがなで発生。
つくる → すくる
おいて → ほいて
いった → きった
Role → Lole
など。

②形の混乱
似た形の違う字を書いてしまう。これは、同じカテゴリーの字に限らない。
A→4
ま → ほ
お → よ
く→ し
エ → ヨ
など。

手が滑って線が何本か増える。存在しない字を書いてしまうことも。
し→ い
い → い゛
P → R
た → 「こ」の部分の線が3本になる
など。

③あいうえお順の混乱
全く文脈や音に関係ないが、あいうえお順で近くの字に置き換わってしまう。
おく → こく
たって → ちって
いつも → あつも
など。

④種類の混乱
単語の途中で、字の種類が変わる。最初と最後の一文字が多い。音は変わらない。
テスト → てスト
だそうだ → だそうda
れいぞうこ → レいぞうこ

⑤文字の飛ばし、先走り
例えば、
とても面白かったです
という文章を書こうとしていたとすると
とて白かったです
みたいな感じで手が勝手に飛ばしてしまう。
だいたい2〜3文字先を見ている感じだ。

この①から⑤は、一つの単語については一種類ずつ起こることが多いが、長い文章のなかでは何種類か混在することがある。

◎対策
自分は、もう字を練習する余力はなかったので、手書きは諦めることにした。とにかく、手書きしないといけない状況を作らない。仕事ではポメラ(電子メモ)かノートパソコンを持ち歩くようにしている。
とは言え、すぐに電子機器で以前の手書きレベルのメモが取れる訳ではない。最低限意味が通るような変換にしないと、後から解読できなくなる、などの手書きにはない罠があるからだ。スムーズにメモを打ち込むことにも練習がいるし、もっと言えば端末を取り出す練習も、端末の存在を忘れない練習もいるので、最初のうちはうまくいかないものと思うしかない。
あと、これまで手書きできていた人が端末を使うことに、まわりの人にも慣れてもらう必要がある。それ何?と質問されたときに動揺しないようになんて言うか考えておくといいかもしれない。特にポメラはパソコンやタブレットと見た目が違うので、最初は緊張したが、実際に出してみると周りはあまり気にしていなかった。

ミーティングなどのメモや、勉強のノートはポメラで。ポメラはデフォルトの設定だとすぐスリープしてしまい、話しながら必要なところだけ書く用途には向かないので、スリープしない設定にしている。
仕事で使う手書きの必要なフォーム類は、選択肢をあらかじめ印刷しておいて、◯つけと最低限の数字だけ書けばいいように作り替えた。

しかし、それでも手書きを完全に駆逐することはできない。市役所とかでは住所と名前を書かされるし、どうしても端末を使えない場面も時々ある。特に住所は、漢字、カナ、数字が全て入るので難しい。これも最初はなかなか正しく書けずにかなり落ち込んだのだが、最近コツを発見した。
まず、お手本を用意すること。免許証とかでいい。そして、お手本を見るときに、住所の全体を見ない。意味の情報が入ることで、飛ばしたり違う字をかいてしまうリスクが上がるからだ。ひらがな、カタカナは初めて字を習ったときの気持ちで、ただの線だと思って形を真似る。特に、頭の中で字を音読しないように気をつける。これは音からくる混乱や、字の種類が単語の途中で変わるなどの間違いを防ぐためだ。
漢字を書くときは、字の全体ではなくパーツだけに注目してその形を真似する。とにかく意味から気をそらし続けるのがコツだ。

こうして書くと大層な感じだが、慣れてくれば字が書けていた時に、間違えないように字の意味とか音とかのことを考えながら書いていたのとあまり変わらない。努力の方向が逆になるだけだ。

ちなみに、躁鬱で、字が書けなくなり、鬱が終わっても治らなかったという話をきいたことがないのだが、これはよく起こることなのだろうか?
もしお仲間がいたら、コメントいただければ嬉しいです。

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