【タイの故郷を訪ねて】スコータイ訪問記(2)
「タイの故郷」と言えば聞こえはよいですが、要は、滅んでしまった王朝の廃墟です。ただ廃墟でも、理屈抜きに人を惹きつける絶妙な壊れ加減というものがありまして、例えばこんな感じです。
何百年も前に造られた仏像が、こんな感じにに風雨に晒されている姿を見ると、やはり心動かされるものがあります。
一方で、風雨に晒されても変わらない美しく豊かな自然があります。
ラムカムヘーン大王の碑文には、「スコータイは美しい国ぞ、水に魚棲み、田に稲穂実る」と謳われているそうです。
まさに碑文に謳われている通りだと思いながら、自転車で道を走っていると、魚が道を「歩いて」いるのが見えました。
歩いている様子は、こんな感じ。
かなり衝撃的でしたが、このお魚さん、このあと息継ぎ(!?)もせず、草むらの方に「歩いて」いってしまいました。
魚も道を散歩するくらい自然豊かなスコータイですが、場所はバンコクから北に約440kmで、チャオプラヤー川の支流であるヨム川沿いにあります。
ただ、南北に流れるヨム川沿いに発展しているのは「新市街」と呼ばれる何の面白味もない小規模な街でして、スコータイ歴史公園に指定されている古都としてのスコータイ(観光資源としての遺跡群が集中する「旧市街」)は、ヨム川から12km西方にあります。
この新市街と旧市街の間を一色線につなぐ道路が、本当につまらない。
タイの都市は、水運が交通の要であった経緯から川沿いに造られているのですが、古都スコータイは、わざわざ西側の山から水を引いて発展したそうです。
スコータイ王朝は、なぜ川から離れた不便な場所にわざわざ都市を作ったのでしょうか?
そんな素朴な疑問が頭に浮かぶと、むしろ、そこに「タイらしさ」を考える上での大切なヒントがあるような気がしてきました。何か大切なものに出会えるかもという予感がしながら、私はガイドさんに連れられてスコータイの西の山に向かったのでした。
(3)に続く