こんな夜に

今週に控える面接の焦燥感から眠れなくなってしまったので、暇潰しと物書きの練習を兼ねて自分の昔話をしようと思う。


高校生の頃、ネットで知り合った年上の女性と付き合っていた話。


私は所謂バイセクシャルで(正確にはパンセクシャルなのだが、聴き馴染みのある言葉で表現させていただく)、それに気づいた中学生の頃から男女問わずのお付き合いをたくさんさせていただいていた。

男性はリアルでのお付き合いばかりだが、女性は決まってネットで知り合った人ばかりだった。といっても恋愛目的の出会いではなく、趣味で意気投合し、その人の本質に惹かれていたので正直性別なんてなんにも関係なかった。


高校3年の時、やはり趣味が合い仲良くなった女性と付き合うことになった。私より8〜9歳ほど年上で、大学は出ていなかったらしいけど、いろんな事を知っていてとても賢い人だった。飛行機に乗らないと会えないのに、二ヶ月に一度は私の地元まで来てくれたり、仕事に行く直前まで連絡をたくさんしてくれる、優しい人だった。

私よりずっと大人びているのに私よりずっと甘えん坊でずっとわがままで、何より自己肯定感が低い人だった。そんなところが好きで、嫌いだった。


いろんなところに遊びに行った。私たちが出会うきっかけになった趣味…といってもアニメなのだが、地元がそこの舞台だったので聖地巡りをした後に甘いものを食べるのが、いつもの流れだった。たくさん写真を撮って、美味しいものをたくさん食べて、二ヶ月分話す。別れ際は必ず事前に書いた手紙を交換しあった。この手紙は、今も捨てられずにいる。

時にはお互いの弱い部分を晒しあった。人間関係、家の事、仕事や学校の事、健康の事。喧嘩もたくさんした。そのたびにお互いを知れる機会になって、もう離れる理由なんてないねと笑っていた。


しかし、別れなんて呆気ないものだと思い知らされた。私は大学に入って、彼女は転職活動で忙しくなった。連絡の回数も減って、お互い寂しくて寂しくて仕方ないはずなのに、「大丈夫?」「うん、大丈夫。そっちは大丈夫?」「大丈夫だよ」なんて会話しかできなかった。素直になれない意地っ張りな性格は、本当にそっくりだった。

そのうち気遣う会話すら少なくなって、何が私たちを縛り付けているのかもわからなくなった。もう好きじゃないのが伝わるのに、悲しくすらなれなかった。

「ねえ、正直もう興味ないでしょ?」と聞いたらうんとだけ返ってきた。ああ、だよなあ。と思った記憶がある。本当にそれくらいしか思えなかった。だけど私が「私もそうだから別れよう」と伝えたら彼女はとても悲しんだ。ひどい、と言った。

あれ?状況は一緒なのに、感情は一緒じゃないの?

正直どちらが先にそうなってしまったかなんて覚えていないけど、後から自分だけひどいなんて言うのかあ、ずるいなあと思ったけれど「ごめんね」としか言えなかった。そこで彼女を責められる程、もう愛してなかった。


それからは借りたものを送り返したり、誕生日に一言二言だけLINEを入れたり、細々とした繋がりはあったけど、半年もすれば完全になくなった。


ただのありきたりな恋愛だった。同性とか何も関係なく、そっと始まってそっと終わった。けれど彼女との恋愛はいろいろな事を教えてくれた。

奢ってくれた時に申し訳なさそうにするよりも目一杯のありがとうを伝えたほうが喜ばれる事。私は案外黒よりも明るい色が似合う事。先の事ばかりじゃなくて今この時を楽しまなきゃいけない事。甘えたい時は何も隠さない方がよかった事。

私は私が思っている以上にずっとずっと、子供だった事。


女性と恋愛をしたのは、彼女が最後だ。今は2年ほど交際している彼氏がいる。

大恋愛なんてものではなかったけど、私にお似合いの恋だったと思う。ちゃんとできてるかはわからないけれど、彼女が説いてくれた教訓を生かして今はうまくやれている。喧嘩も時々するけれど、あの時の私よりはずっと素直だ。

未練はないが、時々今どうしているのか気になって連絡をしそうになってしまう。けれどそれは彼氏に対しても彼女に対しても誠実とは言えないから、絶対に連絡はしない。


オチも何もない、深夜の独り言を読んでくれてありがとう。現在深夜3時半、ようやく眠気が襲ってきたので今夜はこのあたりで終わろうと思う。

皆様にも恋に限らず、眠れない夜に思い出せるような素敵な出会いがありますように。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?