あの時観た「ムカデ人間」の思い出とか
今回のインタビューには、影のように暗い裏事情が潜んでいた。本来なら別のゲストが来るはずだったが、連絡が突然途絶えた。まるで夜霧の中に消えたかのように。その存在は儚く消えてしまった。そんなわけで、急遽大学生のジェイ君を呼び出すことになった。
ジェイと俺の出会いは中学時代に遡る。当時の彼はまだ無垢な少年で、俺は彼にいくつかのアドバイスを与えただけだった。しかし、時が経ち、彼はボクシングに情熱を燃やす青年に成長していた。鋭い眼差しに純粋さを残しながらも、強さを手に入れたジェイを見て、俺はその変貌に心を打たれた。
ジェイは現在、ボクシングに全てを捧げている。彼の目には、炎のような情熱が宿っていた。最近観た映画について尋ねると、彼は少し恥じらいながら「アナと雪の女王2」を挙げた。ディズニー映画に夢中になっているという。外見は鍛え抜かれたボクサーだが、その内面には優しさと夢見る心が宿っているのだ。
アクション映画の話になると、ジェイは「クリード2」を最後に観たと語りだした。1年ほど前、自宅で観たその映画が、彼のボクシング魂に再び火をつけたという。彼がボクシングを始めたのも「クリード」に影響を受けたからだった。井上尚弥を倒せるのではないかと一時は思ったこともあったが、現実はそう甘くはなかった。
ジェイは今でも映画を観続けている。最近観た「インサイド・ヘッド」について語る彼の姿からは、映画への深い洞察力が感じられた。大学で学ぶ心理学と映画のテーマが交錯し、彼の思考はより複雑で豊かなものとなっていた。
そして、ジェイが映画について語る中で最も印象的だったのは「ムカデ人間」の話だった。中学生の頃、彼はこの異色の映画を観た。衝撃的な内容が彼の心に深く刻まれており、その体験は今でも彼の中で鮮明に残っているという。俺はその話を聞きながら、彼がどれだけ多感な時期に強烈な影響を受けてきたのかを改めて実感した。「ムカデ人間」のような過激な映画が、彼の内面にどのような変化をもたらしたのかを思うと、胸が締め付けられるようだった。
ジェイはこれからも映画を観続け、人との会話や共有を通じて新たな発見を求めていくつもりだという。その姿勢は俺にとっても刺激的で、映画の持つ力の大きさを再確認させるものだった。彼の内なる情熱と探求心は、まるで終わりのない旅のように続いていく。
インタビューの最後、俺はジェイに感謝の意を述べた。彼の未来に期待を寄せながら、また次回も彼の話を聞けることを楽しみにしていると伝えた。その時、俺たちの間には静かな共感と理解が漂い、インタビューは幕を閉じた。ジェイの燃えるような情熱と探求心は、まるで夜明け前の空に一筋の光を放つように、俺の心に深く刻まれた。