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【洋楽】Avril Lavigne"Let Go"が私にくれたもの

今日は「はじめて買ったCD」このハッシュタグに関連した話をしようと思う。

それはAvril Lavigneの1st作、"Let Go"である。

もう20年以上前の作品なのかと思うと驚く。

これだけで世代がバレそうだが、当時は本当によく聴いていた。というか、これしか聴いていない時期もあったくらいだ。
リリースから20年以上が経過した今聴いても、よくできている作品だと思う。聴きやすいし、捨て曲と呼ばれる曲もない。

しかし、私は彼女の熱心なファンとは到底言えない。

最新作は未聴のままだし、何度も来日しているにも関わらず、ライブは一度も観たことがない。

だけど、彼女が私に与えた影響は非常に大きい。

その理由は、彼女が影響源として挙げているアーティストのラインナップにある。以下は、自身に影響を与えた曲として彼女が挙げた9曲のリストだ。

グー・グー・ドールズ「Iris」、アラニス・モリセット「Ironic」、クランベリーズ「Zombie」、ブリンク182「All The Small Things」、レニー・クラヴィッツ「Fly Away」、オフスプリング「The Kids Aren't Alright」、オアシス「Wonderwall」、サード・アイ・ブラインド「Jumper」、グリーン・デイ「Good Riddance (Time of Your Life)」

https://amass.jp/155013/

Blink 182やThe Offspring、Green Dayは説明せずとも納得と言えるのではないだろうか。また、ギターをかき鳴らしながら自身の感情を吐露するスタイルは、同じカナダ出身であるAlanis Morissetteからの強い影響を感じずにはいられないし、これも納得できる。

しかし、私が注目したいのはこの辺りの楽曲だ。

誰だよ、と突っ込まれそうだ。彼らの日本での知名度の低さに悲しくなってくる。

しかし、私の音楽的な原点は間違いなくこの辺りの90年代のUSのオルタナティブ・ロックにある。

Avrilが影響を受けていると知り、後追いで聴いたのがそもそものきっかけだった。
最終的にはAvrilよりもどハマりしてしまった訳だが、この手のジャンルのバンドは日本での知名度が極端に低く、周囲には聴いている人どころか知っている人さえ皆無だった。
そのため、表向きではAvril LavigneのCDを高校のクラスメイトに貸しつつも、自宅に帰れば一人貪るようにAvrilのルーツとも言えるアーティスト達の楽曲を聴いていた。
それがGoo Goo DollsThird Eye Blind、それに上記のリストにはないが記事中でAvrilが名前を出してくれているMatchbox Twenty、こういったバンドの楽曲だったのだ。
いずれのアーティストも間違いなく、私の高校時代の一コマを彩ってくれた。


近年はポップパンクの文脈で語られることの多い彼女。しかし、聴けばわかるが、1stには"Sk8er Boi"のような「いかにも」なパンク路線の曲はそこまで多くはない。

例えば、"I'm With You"や"Tomorrow"などの、テンポを抑えた内省的な曲。
そして、"Anything But Ordinary"や"My World"などの、シンガーソングライター然としつつも、歌詞に自身の経験や主張を織り交ぜた曲。
音楽的な激しさは控えめながら、芯の強さを感じる。私の1stにおけるフェイバリットは、こういった(ともすると地味に映りがちな)良曲の数々だった。

Goo Goo DollsやThird Eye Blindが持つ、良い意味でラジオフレンドリーな親しみやすさと、その裏に秘められた歌詞のメッセージ性は、Avrilの曲にも通ずるものがある。

Third Eye Blindは、音楽的にはポップなのに歌われているテーマがひどく深刻という、この落差にびっくりする。その最たる例がこの曲で、陽気な曲調に乗せて歌われるのはドラッグ漬けの男女の恋愛模様。
ちなみにAvrilが影響を受けたという前述の"Jumper"。飛び降り自殺をしようとしている友人に対して、時に諭すように、時に感情を剥き出しにしながら歌う様が印象的な曲だ。

Goo Goo Dollsは、ロックのダイナミズムはありつつもより聴きやすい。
特に"Iris"が収録されたアルバム"Dizzy Up The Girl"は今聴いても色褪せない、グッドメロディと普遍的な歌詞が光る作品で、私にとっても長らく愛聴盤の一つだ。
"Iris"について、Avrilはこのようなことを言っていた。

老若男女の誰もがこの曲を知っているよね。私自身も、そして多くのミュージシャンも、この曲を作りたいと思っている。誰もが自分の“Iris”を持ちたいと思っています。

https://amass.jp/155013/

売れっ子プロデューサーから与えられた歌をそのまた歌うのではなく、音楽そのものにフォーカスして、自分で歌を作り、その歌を自分の歌いたいように歌う。
1990年代後半から2000年代はアメリカでもアイドルブーム真っ只中。音楽シーンへの反発もあったのだろう。そんな中でも自分を貫くAvrilの歌に、当時の私は強く惹かれたんだなと再確認した。

余談だが、2007年のサマーソニック以降Goo Goo Dollsの来日はない。朝一からマリンスタジアムにいた私は軽い熱中症になり、メッセでの休憩を選択することになった。
そんな訳で泣く泣く彼らのライブを観るのを断念したわけだが、まさかここまで来日しないとはと思うと…。一刻も早い再来日を願う。


Avril Lavigneのその後の音楽的変遷をざっくりと辿ってみると、音楽的にはヘヴィーさを増し、パンクロックからの影響がより強く窺えるようになったように感じる。

例えば、本人が当時1st内で最もお気に入りと語っていた1曲目の"Losing Grip"の路線は、2ndのダークなトーンに引き継がれていった。
そして、1stにおいては引き出しの一つに過ぎなかったポップパンク路線は、3rdや最新作の路線に色濃く反映されていくことになった。

Y2Kという単語は私も知らなかったのだが、近年2000年代のカルチャーが再び脚光を浴びており、ポップパンクもリバイバル的に盛り上がっているようだ。
ラッパーのMachine Gun KellyがBlink 182メンバーのTravis Barkerと組んで、それまでのヒップホップ路線から一転、ポップパンクのアルバムを作ってヒットしたのは記憶に新しい。
ポップスの分野に目を向けても、これまた大ヒットしたOlivia Rodrigoの"Good 4 U"を聴いていると、ポップパンクからの影響を感じずにはいられない。
Avrilもその流れで再評価されているようだ。

音楽シーンでは、アヴリルから多大な影響を受けた若手アーティストたちが台頭中。現在19歳のシンガーソングライターであるオリヴィア・ロドリゴは、アヴリルからの影響が感じられるポップパンクのシングル「good 4 u(グッド・フォー・ユー)」で全米1位を獲得し、(中略)自分らしさを貫き続け、現代のティーンたちにとってのカリスマ的存在となっているビリー・アイリッシュも、「今の私がいるのはあなたのおかげ」とアヴリルに感謝。

https://front-row.jp/_ct/17545891

私自身は、ポップパンクというジャンルには実はそこまでハマりきれなかった。
それもあって徐々に彼女の音楽からも離れてはいったのだが、それでも(Billie Eilishの言葉をそのまま引用するようだが)Avrilには感謝している。
"Let Go"というアルバムを起点として、出会えなかった素晴らしいアーティストとの出会いがあり、彼女の音楽と音楽に対する姿勢から、自分を貫くことの大切さを学んだからだ。そして、そのような作品にはそうそう出会えるものではないことを、私は知っている。

改めての感謝とリスペクトを。

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