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手のひらサイズの小説

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わたしの書いた掌編小説をまとめています。短いものは400字、長いものでも、4000字程度です。
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記事一覧

ハスキー・ミルキー・ジャンキー

 本気で驚くと口を開けても言葉が出てこないと知ったのは、時計の針が午前2時を回った頃だっ…

水野うた
1年前
55

ベテルギウス

「確認ボタンを押して、すみやかにお帰りください」 「はい、おつかれさまでしたー」  やけ…

水野うた
1年前
59

第1ケルン

 血が滲んでいる気がして、頬をぬぐった。  もちろん出血などしていない。グローブの甲のパ…

水野うた
2年前
51

あしあと

 日曜日の昼下がり、あしあとを見つけた。コンビニへの道すがら、マンションの駐車場の前にひ…

水野うた
3年前
50

海原に架ける

 いつの間にか風が乾いてきましたね。空が高い。うすくうすく引きのばされた雲を茜色に染めて…

水野うた
3年前
139

秋の気配

 空気の手ざわりが思いのほか軽くて、空を見上げました。昨日までの空に青いインクを3滴、レ…

水野うた
3年前
87

泣きぼくろダウト

   どれだけスクロールしても杏奈を見つけられなくて、はじめて異変に気がついた。  あわてて陸とのチャットを開けてみる。ついさっきの「最近、連絡取った?」というメッセージの上にはニ年前の会話が残っているだけで、その間のやりとりが丸々抜けていた。アイコンをひとつずつ確認するけれど、残っているのはすべてニ年前までの会話。そこまできてようやく、アプリの引き継ぎを失敗したのだと理解した。    新しいスマホに引き継がれたのは、前回の機種変更時のデータなのだろう。あわてて検索してみた

黒焦げのたまねぎ

 暗闇をサイレンが切り裂いて、飛び起きた。夫を見るとやはり緊張の面持ちで、身体を起こして…

水野うた
3年前
294

笑顔の行方

「パッパー、だっこ!」  橋のたもとで伸ばされたちいさな手は、やわらかく湿っている。娘を…

水野うた
3年前
76

あの夏の花火

 あれね、ちょっと昔のお友達の話してもいいです? 吹奏楽やってたんですけど、あの日はコン…

水野うた
3年前
77

追悼

「そんな日もあるし、こんな日もあるのよ」  となりで空を見上げながら、母は言った。どこか…

水野うた
3年前
103

ウニ・コテロでゆく極上の旅

「かつてない極上の旅をお約束します」   囁いたのは小さな女性スタッフで、それがホームペ…

水野うた
3年前
93

街灯に咲く

 デモ用帳票の動作確認を済ませたところで、PCの電源を落とした。大きく息をつく。あとは、…

水野うた
3年前
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Vanillaトレイル

 楓のくるぶしは、ちいさく尖っている。  靴下からはみ出たそれはわたしをふやけさせるには充分で、きっとこの笑顔ははしたなく溶けているにちがいない。  プレゼントしたばかりのスニーカーに楓の足がおさまる。ネイビー✕白の巻き上げソールが、昨夜の名残りを健康的な彩りで上書きするのを見て、うれしいようなさみしいような気持ちになる。  行かなければいいのにと思いながら、楓の首に鼻をうずめる。ほんのり温まったヴァニラを吸いこんで、わたしは観念する。  いってらっしゃい。  洗い物は後