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Long Distance

あの山の雪が消える頃
僕はもうここにはいない
過ぎゆく季節を振り返りながら
荷物をまとめて旅立ってゆく

夕暮れのピアノ とぎれとぎれの言葉
ありがとうが言い足りなくて
春風の中 僕は立ち尽くしてる ずっと

So Long, Long Distance
君のいない遠くの町で
So Long, Long Distance
君への手紙を綴ってゆくよ

まぶしい微笑み まっすぐな眼差しに
思わず顔をそむけたことさえあった
君のぬくもり その優しさを
カッコつけて拒んだことさえあった

ごめんね僕は まだ素直じゃないよね
でも心の中で頑張れって
小さな君の背中に声をかけ続けてる ずっと

So Long, Long Distance
君のいない遠くの町で あの空の下で
So Long, Long Distance
君への歌を歌ってゆくよ

あの山の雪が また積もる頃
僕は君を思い出すだろう 新しい暮らしの中で
まぶしい微笑み 君の優しさを
かすかな痛みとともに僕は思い出すだろう きっと

So Long, Long Distance
君のいない遠くの町で
So Long, Long Distance
君への手紙を綴ってゆくよ
君への歌を歌ってゆくよ

*スイスから帰国する際に作った歌です。”So long(さよなら)”と”Long Distance(遠く離れて)”を”Long”で繋いだ、いわば英語版の掛詞(かけことば)を、サビのフレーズに用いています。

掛詞は、日本の和歌ではよく用いられる修辞法です。たとえば百人一首に入っている小野小町の歌が有名ですね。

花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに
 
「ふる」には「(雨が)降る」と「(年を)経(ふ)る」のふたつの意味、「ながめ」には「長雨」と「眺め」のふたつの意味が詠み込まれ、うつろいゆく花の色と、衰えゆく我が身への慨嘆が、重層的に表現されています。限られた字数の中に豊穣なイメージを織り込む修辞法としての掛詞は、多くの場合、情景と心情の二重構造になっているようです。

この歌でも、遠くの山の雪景色に惜別の情を託してみました。ふりかえってみると、スイスで作った歌には雪が頻繁に出てくるのですが、日本で作った歌には雪がほとんど出てこないことに気づきます。目の前の景色にダイレクトに影響を受ける単純さが如実に表れていますね(笑)。

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