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連載中国史2 黄河文明(2)

紀元前3000年紀の後期黄河文明を竜山(ロンシャン)文化と呼ぶ。仰韶文化と同様に、畑作を基盤とした農耕社会であったが、牛や馬の家畜化に成功した竜山文化では、生産力の向上に伴って集落が大規模化し、集団間や集団内での貧富の差も拡大した。

黒陶(コトバンクより)

仰韶文化の代表作が彩陶であるのに対し、竜山文化の代表作は黒陶と灰陶である。黒陶は表面を磨いた薄手の陶器で、焼いた後に燻(いぶ)して渋い黒みを出している。彩色を施さない灰陶は、黒陶に比べて厚手で粗く、日常の使用ではこちらが主流であったようだ。

彩陶・黒陶・灰陶(「世界の歴史まっぷ」より)

文字を持たない時代においては、土器は単なる煮炊きや貯蔵の道具にとどまらず、何らかのメッセージを伝えるメディアとしての役割も果たしていたのではないかと推測される。後に出現する日本の縄文式土器にも、その傾向は顕著に見られる。竪穴式住居から次第に木造家屋へと移行し、社会の階層化が進んだ後期竜山文化では、陶器の所持が社会的地位の象徴として機能した可能性も考えられよう。黒陶の醸し出す洗練された美には、技術の向上とともに、支配階層出現のきざしが感じられるような気がするのだ。

豚の家畜化の時期(jppa.bizより)

仰韶・竜山文化を通じて、5000年以上前から豚が家畜化されていたのは驚くべきことだ。十二支では日本の亥がイノシシを指すのに対して、中国の亥はブタを意味するそうだ。遠い昔、十二支が中国から日本に伝わった際に、日本では馴染みのなかったブタの代わりにイノシシを入れたらしい。それだけ古くから、中国では豚が重要な家畜として、食用に供されていたというわけだ。なるほど中華料理には、豚を素材とした料理が多いはずである。

イノシシとブタの違い(contest.iapias.jpより)

多民族蔑視につながる中華思想はいただけないが、長い歴史を持つ中華料理と陶器には、さすがに世界に誇る素晴らしさがあると思われる。中国4000年の歴史は伊達ではない。陶磁器を英語でchinaと通称するのも、その歴史と伝統を慮れば、なるほどと納得できるのである。

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