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連載中国史25 唐(2)
太宗李世民の後継として帝位に就いた高宗は、唐の版図を更に拡大した。618年には西突厥を討ち、中央アジアのアラル海まで勢力を伸ばし、朝鮮半島でも百済・高句麗を次々と滅ぼして、東西に大きく広がる大帝国を築き上げたのである。
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唐の勢力拡大に伴い、東西の人や物の往来も盛んになった。太宗の時代には西遊記のモデルとなった玄奘(三蔵法師)がシルクロード(絹の道)を経由して陸路で天竺(インド)に到達。当時最高の仏教研究機関であったナーランダー僧院に学び、帰国後は大量の仏典を漢訳して中国での仏教普及に努めた。高宗の時代には義浄が海路でインドに向かい、二十年余りにわたって各地の仏跡を巡礼し、現在のインドネシアにあたるシュリーヴィジャヤ王国にも滞在している。玄奘の残した「大唐西域記」や義浄の著した「南海寄帰内法伝」は当時のインドや東南アジアの様子を知る貴重な資料となっている。
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そもそも仏教発祥の地はインドであり、仏典の原語はサンスクリット語(梵語)である。それが中国で漢訳されて日本に伝えられ、現在のような経典として継承されてきたのだ。ゆえに時代や訳者によって、その表記は異なる。たとえば釈迦をはじめとする聖者のことを、サンスクリット語では「バガヴァット」と呼んだが、南北朝時代の高僧である鳩摩羅什(くまらじゅう)はそれを「世尊(せそん)」と訳し、唐代の三蔵法師玄奘はそれを「婆伽梵(ばかぼん)」と漢訳した。英語では放浪者を"vagabond"と呼ぶが、この語源にも何らかの共通点があるのかもしれない。
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英語の「バガボンド」は宮本武蔵を主人公とした井上雄彦氏の漫画のタイトルに用いられて有名になった。一方、三蔵法師の訳語である「バカボン」は故・赤塚不二夫氏の名作漫画「天才バカボン」のタイトルの元になったという説もある。「バカなボンボン」と聖者「婆伽梵」の掛詞であり、「放浪者」や「風来坊」の意味をも含んだ深いタイトルだというのだ。そう言われてみれば、バカボンのパパの「これでいいのだ」という決め台詞には、悟りの境地が表れているような気もしてくるのである。
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