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鳥羽

道行くさきの地面に、大きな鳥の羽根が、いくつも散り落ちていた。
羽根は、色さまざまであったが、どこか色を失くしているようにもみえた。

これほど大きな羽根をもつ大型の鳥が、このあたりに生息しているのだろうか。
そもそも、これほど大きな鳥が実在するのだろうかと、訝しく思った。

否、これは、鳥ではなく、人間から落ちた羽根なのかもしれないと、すぐさま思い直した。
大きな羽根は、もし人間に翼があったなら、その翼から落ちたと思われるくらいの大きさであったから。
しかし、人間に翼はない。
であるなら、これらは、天使の羽根だろうか。

わたしが考えこんでいると、驚いたことに、連れ立って歩く友は、事もなく、散り落ちている羽根に行き当たるたび、それを拾いあげ、地面に立てたり、建物の壁に掲げたりしていた。

不意に、「鳥羽は、卒塔婆」という言葉を聴いた。
何の言葉遊びかと腑抜けたが、塔婆は、供養のしるしであり、霊の依代でもある。
妙に腑に落ちた。

わたしも友に倣い、鳥羽を立てながら、さきの道を歩んだ。

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