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短歌

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2023年9月の記事一覧

短歌(2023年7〜8月)

短歌(2023年7〜8月)

じっと地面見つめて歩く己という器の中を歩いているよう

でこぼこの地面を確かめるようにきみと歩いた道踏みしめる
(2023/10/23 神戸新聞文芸・入選)

カート引き歩く後ろでクシャクシャと枯れ葉あやめる音が聞こえた

鳴き尽くした蝉そこここに落ちていて翅だけ残し砕けゆく夏

短歌(2023年4月)

短歌(2023年4月)

見上げれば枝切られた木の影濃くきみがいる気がした黄昏時

旅立った瞬間に間に合わなくて きみのたましい翳(かげ)りなくあれ

ひこうき雲私の澱(おり)を乗せ忘れ三つそれぞれの空へ消えた

短歌(2023年3月)

短歌(2023年3月)

洗濯物干しつつ涙あふれ出す、乾かしてくれこの水分も

きみの写真毎日見ては宙を撫で 柔らかな毛並みのあのあたま

巣にこもり友らの日常垣間見るもはや雛鳥ではない我は

羽根ペンにインク吸わせてしたためるその文(ふみ)はきっと菫の匂い

届かぬとわかっていても祈る日々それが自己満足だとしても

恐竜たち戦いの末斃(たお)れゆくあの眼を知ってる 愛犬の、あの

隕石がおちて滅びゆく恐竜たち他人事(ひと

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短歌(2022年)

去来する意味もたぬもの書き散らし舟を漕いでは意義を求めて

我の道 亀の歩みで進んでは甲羅の中でゆらんゆらんと

「普通」という多数派に入れなくて我の行く先ぼんやりかすむ

短歌(2021年)

夕暮れ時 万年筆の影法師軽やかに舞い文字おいてゆく

夕陽から巨大な白き翼伸べ我らを知らぬままとけてゆく

「恋人」と一般化された言葉では表しきれない存在で

SNS輝き満ちてひりつくも我が笑う日泣く人もいる

短歌(2019年)

いるはずだ時間泥棒きみといる日に盗まれるいつも必ず

ジャリと鳴る道を見つめるあの小さき足で確かに踏みしめられた

散歩道みどりの中に誇る紅(あか) 秋色吸い込み朝を駆けゆく

月明かり緋色に匂う曼珠沙華 切なく凛とし我が目を奪う

雨上がり雫が光る月の下 花は静かに虫の音(ね)を聴く

わけもなく淋しくなる夜きみの声聴きたい気持ち隠しておやすみ

指の先まで満たしたい言の葉の脈へと潜りさらに奥ま

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