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マンガ『戦争は女の顔をしていない』 誰に読んでほしい?

マンガ『戦争は女の顔をしていない』がめちゃくちゃに強烈だった……。一人でも多くの人に読んでほしい……

原作者はスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさん。ベラルーシ出身、2015年にノーベル文学賞を受賞したジャーナリスト。
原発事故の被災者や家族にインタビューした『チェルノブイリの祈り』は読んだことがあった。事故対応にあたった人や家族の壮絶な体験が、だけど淡々と語られる。「語り口調」のパワーを感じる本。

BuzzFeedの記事によると、『戦争は女の顔をしていない』は彼女のデビュー作だったそう。こちらは未読だった。

第二次世界大戦時にソ連軍に従軍した500人以上の女性たちから戦争体験を聞き取った渾身の1冊
当時ソ連軍には100万人の女性たちが従軍し、軍医や看護婦としてはもちろん、多くが武器を手に戦った。(BuzzFeed記事より)

ソ連軍、こんな前線にまで女性を動員したんだな……不勉強ながらこのマンガを読んで初めて知ったことだらけ。「待つ」「帰ってこなかった」ことが多い日本の女性とは、戦争への向き合い方がちょっと違うなぁと。(いや、ただこれは沖縄の女性たちは除いて。本土の多くの女性といった方が正しいかもしれない)
このBuzzFeedのインタビューでは、コミカライズした小梅けいとさんの言葉がとても印象に残っている。

女性が女性ものの下着をつける、そんな当たり前のことすら許されない時代があった……でもそれを語る女性は『嫌だった』と思い出しながらも、その気持ちの根源がわからない。目の前のジャーナリストがなんで泣いているのかわからない。スヴェトラーナさんは、戦争が人間性を剥奪していた現場を再発見して泣いているわけですよね」
「彼女が500人以上の女性たちに話を聞いて回った。重い口を開いた人がいた。隠されていた〈女たちの戦争〉を明らかにした――戦時下で起きたこと自体の悲惨さだけでなく、彼女のその奮闘自体もとても大事だと思うので。スヴェトラーナさん自身の思いもマンガの中で伝えていければと思っています」(BuzzFeed記事より)

2巻もとても楽しみ。アレクシエーヴィチさんの思いが届くよう、本当に多くの人に読んでほしい。

だからこそ、「特に若い女性に読んでほしい」という池上さんの記事↓にめちゃくちゃ驚いた。え?なんで特に若い女性??

戦争を知らない若い世代、特に若い女性に読んでほしい。内容的に重く、他国のことなので文章だけだと理解するのが難しいけれど、コミックならば非常に手に取りやすく、内容もわかりやすい」と評す。(好書好日記事より)

戦争の前線がこんなに壮絶だと具体的に想像できたかどうかはさておき、毎月毎月、否応なく血を流す身体に振り回されている女性は、この女性たちの体験にめちゃくちゃ共感できると思う。
それよりも、女性の身体に〝理解がない〟のに戦争に組み入れてしまう可能性のある側にこそ読んでほしいと思う。「戦争を知らない若い世代」というのは性別問わず同じだし。というか70歳以下はみんな戦争を知らない世代では……。

たとえば、池上さんが作中で強く印象に残ったいうエピソード。女性だから毎月生理がくるが、男性の将校たちはまったく理解がない。下着の用意もしてもらえず、血が乾いた軍服はガラスのようになり、当たる部分が切れたりすれたりして傷になる。「『やっぱり女は』と言われたくなかった」と男性以上に戦いながら、「考えはそうでも女の身体が……」と現実に苦悩する。証言者は、相手が同じ女性だったからこそ本音を吐露することができたのだろう。(好書好日記事より)

印象に残ったエピソードも抱いた感想も、わたしと一緒だった。だからこそ、この証言を女性同士の「痛々しいほど分かる…」で終わらせていてはいけないのでは?
女性のアレクシエーヴィッチさんだから聞き出せた貴重な証言を、世代や性別問わず多くの人に伝えないと、と思う

コミックは1話ごとに公開もされてます。まとめて1冊で読むのがおすすめだけど……ぜひ1話だけでも読んでほしい。

そしてこないだ、新聞広告も掲載されていた!うれしい!


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