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伏せられたキャンバスの存在感 原美術館

原美術館の「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」にも滑り込んできた。
旅に出られなくなり、これまで行ったことない都内の美術館を訪れることが増えて、実は原美術館も初めて。こんな瀟洒で閑静な住宅街に美術館が…。

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わたしは久門剛史さんのResumeという展示がいちばん好きだったな〜。
壁や床が、いちめん白く塗りつぶされた部屋の中に、目に眩しい蛍光ピンクや黄色、オレンジのキャンバスが伏せられている。
キャンバスの色が壁や床に反射して、ぼんやりそのキャンバスの存在が浮かび上がる。

この記事のサムネイルにある作品↓。

配布された作品解説によると、

緊急事態宣言下の自粛期間中に、様々な物事が待機させられていた状態を想起させるかもしれません。
サンルームからは6000ヘルツの高周波が聞こえます。この音は正弦波という実験や検査などに使用される自然界には存在しない人工的な純音で、虫や電車、飛行機など、この空間で聞こえる様々な音の差異を感じる為の聴覚的な物差しとして配置されています。

たしかに緑いっぱいの庭から聞こえてくる、じーーーという晩夏のセミの鳴き声や、遠くから聞こえる電車のゴーーーッという音とは混じり合わない異質な感じ……。


すごくぞわぞわしたのは、小泉明郎さんの「抗夢#1」だった。

まずはただ白い部屋の中で、音声を聞く。

何もない部屋だけど、音声によっていろんな想像が生まれる。それにしても「チョウコクガモエテイマス」という無機質な声が怖い…(めちゃ耳に残る)

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彫刻、見開いた目、積み上がった死体、祈り……ぼーっと空を見つめる。みんながそれぞれの音声を聴きながら、何もない部屋に居る、へんな感じ。

次の部屋の音声では、さっきよりも親近感のわく人間の子どもの声が流れてきたな、と思ったら、光のインスタレーションと合わさると、寒気が……。
言葉に言い表せない、すごく怖い夢をみたような気持ち。誰かあの光からあの子を守ってあげて…

奥のドアにあった常設展示、奈良美智さんのMy drawing roomで少し癒された…笑

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併設カフェでぼーっとしながらケーキ食べて、ようやく実世界に帰ってきたような。

この展示は行った人に「どう感じた?」って聞いてみたくなるなぁ。感想いろいろ調べてみよっと。

……と思って調べていたら、2021年1月の展示を最後に、この美術館閉まってしまうんだ…!なんと…!!それはとても残念だなぁ。

たしかに建物は古いけど…それもあって混んでたのかなぁ。

そんな気持ちになってもう一度、Resumeを見つめて、暑いなかを汗だくだくで帰ってきた。なんだかさみしい。

冒頭の美術手帖の記事で、久門さんは

「裏側を向いた作品は、現在のような状況でも心の火は消せないこと、色彩は失われないということ。芸術の力はにじみ出てくるものだ、ということを表しています

と語っていた。わたしの火もジワジワと燃えているところ。

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