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不思議な世界に誘惑してくるピーター・ドイグ

のんさんが「音声ガイドをやったよ」という投稿で知ったピーター・ドイグ。スコットランド生まれ、トリニダード・トバゴとカナダで育つ。2002年に拠点をトリニダード・トバゴへ移し、ほかのアーティストに与える影響から「画家の中の画家」とも呼ばれているそう。

今回が日本初の個展だったそうなんだけど、いっぺんに好きになってしまった。印象的だった絵を紹介します。

入ってすぐのところには、なんだか危険な色合いで、心がざわざわ、目が離せない絵「のまれる」があった。タイトルもちょっと怖い。

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終わってから色々調べたら、チェルノブイリの原発事故でさまざまなものが汚染されていることを知って描いた絵なんだそうだ。中央に配色された「赤」がなんとなくやばそうな雰囲気を醸し出してる……。

《のまれる》という作品の背景にあるのは1986年に起きたチェルノブイリ原発事故だ。当時、カナダの湖やスコットランドの鹿肉が汚染されている、といった報道がされていた。そんなときにドイグが読んだドン・デリーロの著書「ホワイト・ノイズ」の“夕日ですら原発の影響を受けている”といった意味の一節から、美しさと同時に毒を感じさせるような絵を描こうと思ったのだという。

あと椅子に座ってぼーーーーっと眺めてしまったのは「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ」

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ドイグの世界に招き入れようとするかのような道化の格好をした二人組。あやしさ満点だけど、ついていきたくなるような。全体的にエメラルドグリーンの色調が、美しいな~だけど妖しいな~と思わせる。蠱惑的とはこのこと……。

トリニダード・トバゴの首都、ポート・オブ・スペインにある墓地を描いた「ラペイルーズの壁」は、小津安二郎の映画「東京物語」の静けさにも影響を受けたんだそう。

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ところどころ塗装がはがれた墓地の壁。影の黒がとっても濃くて、じりじりする日差しが伝わってくるかのような。

「ペリカン(スタッグ)」の絵は、すごく不穏な感じがした。

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音声ガイドによれば、ドイグが見た実際のシーンを描いたそう。絵ではよく分からないけれど、実はこの人の右手には、さっき殺したペリカンが……。
滝の中の筆致に、ペリカンが浮かび上がってこないか探してしまう。食い入るように見つめるわたしを、「こっちを見るな」と言うかのよう。

トリニダード・トバゴでは、ライオンは勝利の象徴。「ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)」も、濃い緑色の扉と、浮き上がるようなライオンが目にとまる。

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ドイグは拘置所の扉と、獣舎のドアが同じことに気づいて、実際にはありえない「人が内側にいて外にライオンがいる様子」を描いたんだって。
実はよーーーく観ると、ドアの格子の内側に誰かの横顔が描かれているんだけど。中にいる人は何を思っているのだろう。

「パラミン それはカカオの匂いのする言葉」という音声ガイドでのんさんが詩を朗読していて印象に残ったのが「無題(パラミン)」

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トリニダード・トバゴの植民地を思い出して描いた絵だそう。カーニバルで全身を青く塗る風習があって、ブルーデビルというんだって。

↑この記事にもいろんな絵の解説が載ってました。
日時予約制で混んでないので、実際に鑑賞して、絵の具の盛り上がりや大きな絵の迫力を体感するのをオススメします。わたしももう一回行こうかなぁ……。

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