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SNSと適度なお付き合い Twitterでも「クラ」とつながるには?

文化人類学者の磯野真穂さん、編集者の林利香さんが2016年に始めた「からだ」や「食べ物」について考えるワークショップ「からだのシューレ」。「かわいいって何だろう?」とか、元当事者でプラスサイズモデルの吉野なおさん、管理栄養士の鈴木真美さんが運営に加わってからは、「摂食障害の作り方」などなど、いろんな企画があって、毎回開催を楽しみにしているのです。

今回のシューレは「新学期開始直前!Webの中でどう過ごす?〜二宮明仁さんトークショー」でした。

VTuberのプロデュースを手がけている二宮さんがゲスト。大学生の頃にネットが出回り始め、「就活に役立つかも」とどんどん使うように。自己紹介で「ツイ廃です」と名乗っちゃうぐらい、SNSのヘビーユーザーだそうです。笑

そんな二宮さんの「承認中毒な私たち」と題したnoteも非常に興味深い。

わたし自身も、TwitterにFacebook、Instagram、少し色合いが違うかもしれないけどnoteやLINEなどなど、いろんなSNSを利用しています。思わぬ人とつながれたり、自分の発信したことにリアクションをもらえたり……すでに無くてはならない存在になっているかも……。ということで、自分なりの付き合い方のヒントを見つけたいな、と参加しました。

SNSは私たちの承認欲求を肥大化させる

二宮さんは、SNSに「私たちの承認欲求を肥大化させる面がある」と指摘します。ユーザーにもっとSNSを使わせるため、企業側が色々工夫しているということも分かるそうです。

簡単に投稿させる仕組み(140字、おしゃれな写真加工、編集素材をたっぷり用意した短い尺の動画……)
簡単に反応を送れる(いいね!)
③フォロワーが増える・数で明示される
④反応がほしくてまた投稿する

二宮さんは「それが行き過ぎると、どんどん『いいね』や『フォロワー』がほしくなって、それが自分の価値(=モノサシ)になってしまう人もいる」と言います。だから、より多くの注目を集めるための刺激的な投稿や、過激な物言い、バイト先の冷蔵庫に入るといった〝問題行動〟を起こすようになっていく。

さらに、二宮さんは、自分の興味・関心に絞られた投稿がタイムライン上に流れる「フィルターバブル」にも注意が必要だといいます。

確かにこのフィルターバブル、気づかないと本当に怖い。たとえば、わたしは医療の取材をしていたとき、過去に「ステロイドは怖い」と信じていた女性にお話を聞いたことがありました。Instagramのハッシュタグ「#脱ステ」を検索して、「やっぱりステロイドは怖いんだ」と確信し、「ほしい情報」しか見なくなってしまう……。
たまには「自分は今そんな状態に陥っていないか?」と意識的でいないと怖いですよね。

二宮さんは、フォロワー数は偽装できるし、無目的にいいねやフォロワー数を追わず、「自分と全然関係ない本や新聞を読んでみたり、色々なコミュニティーとつながったり、たまにはスマホを置いた時間を作ったりしては」と提案します。

アテンション・エコノミー 注目は貨幣と同じ価値

文化人類学者の磯野さんは「SNSだと、リアルに会っていたら言わないようなひどい言葉が飛んでくることがありますよね」と話します。二宮さんが自分の顔や名前を出して活動しているのは、「このアカウントの中に人がいるんですよ」というアピールをしている面もあるのだそうです。

13歳のときから5年間、家にこもって「ネットに住んでいた」という参加者の男性は、その攻撃を回避するには「アカウントと自分を分離して、自分が攻撃を受けているわけじゃないから大丈夫」と考えることだと言ってました。(わたしはなかなかこれが難しい……Twitterも自分の考えが丸出しだからな~)

さらに、アテンション・エコノミー。1997年には提唱されていたそうだけど、「注目」を集める事が「貨幣」と同じ価値を持ち始めているというお話も、確かになるほど……と頷いてしまった。(SNSの短い料理動画、ついつい見ちゃいませんか…)

SNSで簡単に「承認欲求」を満たされるようになって、二宮さんは「SNSがある前は、こんなにみんなから『いいね』って言われることなかったですもんね」と笑います。
承認欲求があるのは、人として当たり前。でもそこに「ビジネス」が入り込んできて、承認が「数」で可視化されるようになって、誰かと「比較」できるようにもなってしまう
だから、誰かと比べてしんどくなっちゃったり、数を追ってムリに頑張ろうとしちゃったり。SNSの裏側(仕組み)を知ることで適度な距離感をつくるって本当に大事だなぁ……

SNSにもクラ的な存在がいたら

あと、とても面白かったのが、後半に磯野さんが紹介してくれた「クラとギムワリ」のお話。

メラネシアでの「交換」の体系なんだそう。
例えば、あるクラパートナーからネックレスが回ってきたら、それは手元にずっと置いたりがめたりせずに、別のクラパートナーに渡していく。島中をネックレスが回っていて、逆回りで腕輪が回っているんだって。(すごい不思議な交換の儀式!)
このクラパートナーとは信頼関係で結ばれていて、互いに困っていたら助け合うそう

でもギムワリの交換はGive and Takeで、ビジネスライクな関係。「こんなに良いモノをあげたんだから、もっと良いモノくれよ」とか言っていいし、値切ってもいい。笑

SNSはなんとなくギムワリ的になりがち。フォロワー数が多いからつながっておこう、とか。本来はSNSでクラ的な関係がつくれるといいのに。

ただ、参加者からも意見が出たけど、今はビジネスでも「クラ的なファン」が大事になってきているんだろうなぁ。数ではなく、質重視というか。

二宮さんも「ビジネスでも大事にしているのが、自分たちが『好きだ』という価値観を『好きだ』と言ってくれる人。そんな人たちとつながりたい。仕事も生活の一部だから、そういう人とコミュニケーションしているとき、目的なく普通に楽しい」と話していました。

そして、最後に二宮さんが紹介してくれたNetflixのドキュメンタリー「グレートハック」
これは早速イベント翌日に見て、ゾッとしすぎたので、また別のポストで書きたいなと思います。

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