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怪談水宮チャンネル③

夏ですもの。


①母方の祖父たち

この春のある日、突如ハンパなく具合が悪くなった。冗談抜きで救急車を呼びたいレベル。加えて、近年あまり出ていなかったひどいパニック。
その時、なぜかはまったく分からないが、母方の祖父と曽祖父に向かって「助けて❗️おじいちゃん助けて❗️」と何度も泣きながら叫び、普段触りもしない数珠を握って転げ回っていた。
翌日、珍しく東京の姉から電話があった。私が苦しんでいたちょうどその時間、母が急に倒れ、緊急手術を受けていたという。幸い発見も早くその日のうちに帰宅できた、との報告。
母方の実家は寺であり、祖父は僧侶、曽祖父はその寺を興した僧侶である。私が身内の中で懐いていた数少ない人の一人が、その祖父だった。祖父たちが母を守ろうと働いていたのを、知らず遠方の私が作用を受けていたのかもしれないと思い、祖父二人に礼を言った。


②廃屋

世田谷に住んでいた頃、近所にひどい状態の廃屋があった。周りの豪奢な住宅とは不釣り合いで、不法投棄のゴミだらけ。
見るのも通るのもイヤなのに、なぜか妙な引力があってたまにふらっと寄ってしまう。人心はしばしば負のものに惹かれる。いまは気をつけて、そういう場所には行かないようにしている。ひどいメディアやよくない人物、人間が作り出した残酷なものなどからは距離を置くようにしている。


③バラをいただく

部屋に出た瀕死のゴキブリを殺すに忍びなく、薬剤をかけたりもせずそのまま放っておいた。
数日後死んでいたので外に還してやろうと庭に下ろす際誤って、包んでいたティッシュごと落としてしまった。
拾いに庭に出たが、死体がどこにもない。完全に消えたのだ。しゃがんで探していたそこからふと目を上げると、その秋最初のバラが、朝露に濡れて開いたところだった。摘んで部屋に飾った。


④摂社

東京の地元の神社をよく歩いていた。
ふと、傍から「おお!」という声が聞こえた。見ると、何十年もそこを通ってきたのにまったく気づかなかった摂社があった。
行って頭を下げると、声を出したのは男性で、拝殿向かって左側にいた。烏帽子様のものを被っている。
中央から女性のものらしき声がした。
「これからあの女について踊りを覚えるんだよ、いいね?」
はい?
ダンスも踊りもまるで縁がない。女、というのも謎だ。その後清掃の職を得て、上司の女性に大変お世話になり、生涯において忘れられない尊敬すべき師となった。そのかたとダンスは関係はない。
しかしコロナになり職場も閉じることが多くなり、休暇中にYouTubeのサブスクに入ってBIGBANGにバカハマりし、壊れていた足を治すつもりでダンスを覚えた。半年ほど経って、友達の一人に見せたら「それ(ダンス)金取れるわ」と言った。別に取らないし人前ではやらないが、今も気が向いたら一人で踊る。
ちなみにその摂社のご祭神は、アメノウズメノミコトである。日本最古のダンサーの。


⑤タワー

通勤の電車から、送電線を眺めていた。
高い塔が電線を支えて立っている。ふと、その塔が
「守る」
と言っているのが聞こえた。
「何を」
と問うと
「龍」
と答えた。
つまり、電気、火を吐く火龍を護っているのだと。


⑥悟られる

落ち込んで歩いていると、突如植え込みから猫が飛び出してきて猛烈にゴロゴロスリスリしてきた。
しっかりせえよ、という、猫なりの形かな、と思い、以来友猫の一匹である。
夫と付き合っている頃、彼はよくあちこちに出張させられていてデート先も様々だったが、会いに行く時必ず白鷺に会った。飼ってんのかレベルで必ず会った。
今も、連絡がくる日は必ず飛ぶ。
幸先がいい日は白鷺や、鳶に会う。必ず幸運がある、というよりは、ラッキー♪と気持ちが上がることがラッキーを呼ぶようだ。


⑦霊感社長

昔仲のいい飲み友達だった土建会社の社長(年中作業着のおっさん。酒とソープと猫が大好きな居合の達人で、一緒に遊びに行くのに真剣を持ってくるのは参った。それ電車に持ち込まないでおかしら)。
私は当時レジのパートをしていた。立ち仕事で腰が痛くてたまらず、バーでその社長と並んで飲みながら痛い痛いとぶーたれていた。彼が
「ふうん」
と言ったその刹那、痛みが完全に消えた。振り向くと、社長の片手がすすすと離れていくのが見えた。触れたわけではない。
「おかしら。今なにした?」
「えー?べつにい。なんにもしてないわよー」
うそ。絶対なんかした。
独自のやり方で、触れずとも痛みを取ることが社長にはできた。


いかがでしたか水音の怪談盛合わせ。
ではまた次回。

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