ゲノム🧬ゲーム

NHK BSの番組、「ヒューマニエンス」を毎回見てるのですが。

昨夜はゲノム編集の話だった。
正直頭を抱えてしまった。

遺伝性の難病は7000あまりあるとされるそうで、ゲノム編集でその病の人たちが小さいうちから助かる公算が爆上がりした。例えば筋ジストロフィーなども。不調を起こしている遺伝子を、中村主水みたいな必殺仕事人的なやつをちゅっと注入すればその中村主水は勝手に要らない遺伝子部分のみを切って回り、分解される（去っていく）。
主水でも梅安でもいいがかっこよすぎだ。

がん治療なら、がん細胞をやっつけるＴ細胞を強化してそれをちゅっとボディへ注入。するとメスもサイバーナイフも抗がん剤もなしで、自前の強化されたＴ細胞が勝手にがんをやっつけてくれる。

食料にしても、遺伝子を足した「遺伝子組み換え」でなくて「余計な遺伝子」をこれまたゲノムでサクッとカット編集したのはもう市場に出回っている。血圧を下げる効果の高まったトマト、身の多い鯛、米の多く取れる稲、毒性の弱いじゃがいも、アトピーやアレルギーを起こさない卵。
医療だけではなく食料危機問題もやっちゃう。
たしかにこれは今、世界が、人類が、シン世界（大阪でない）、シン人類になっていく節目の時に立っているということだ。

医療と食料危機問題の解決には諸手を挙げて賛成しかけたが、デザイナーベイビーを作ってしまった研究者も案の定現れた。つまりAIDSに感染しにくい赤ちゃんを勝手に作ってしまった奴が現れたという。
これはもちろん世界中から総スカン。つまり倫理を超えたな？という。

病が解決されることは望ましい。知り合いの方の奥様が以前、自殺された。治療法の分からない、全身が常に激痛に苛まれるという難病を患い、家族にこれ以上迷惑をかけたくない、この痛みにこれ以上耐えられない、と書き置きを残して。
もしそんな事態に自分がなったら…生きていかれるだろうか？あるいはもっと怖いのは、自分の大切な人がそれに罹ってしまったら？

自分なら安楽死を望むかもしれないが、心は分からない。その瞬間になって猛烈に「もっと生きたい」と渇望するかもしれない。そして自分の大切なひとが目の前で苦しんでいたら…かなり躊躇なくそのゲノム編集治療を選ぶだろう。

美人になりたい、痩せたい、SEX強くなりたい、髪生えろ、ワキガがヤバい、私ゃも少し背が欲しい、学力が欲しい、筋力が欲しい、病気したくない、可愛い子どもが欲しい、若返りたい長生きしたい。
人類みんなの願いで地球がギシギシ言ってるな。

人は神のハサミを手にしてしまったのだ、という。
バカとハサミは使いよう、ともいう。
狂人に刃物、ともいう。

少し考えてみた。
人が中心の話のサイエンス番組なので、どんな技術も研究も人ファーストではあるが、マウスやラットたちを見るといつもへこむ。ごめんね。ごめんよ。と思って胸が詰まる。
その実験動物をゲノムっちゃってヒト化することも始まっているそうだ。つまりより人体に近い体に作り変え、人体実験に近い結果がすぐに導き出せるように。
そのねずみたちの生涯を思うと、なんか。これまでのたくさんの、ひどいことされるために飼われてきた動物たち、、、。いや、ごめん、たまに焼肉は食べたいよ。食べたいけど言うは言うよ。

痛みや苦しみ、病や老いは、とても面白くてステキなギフトだと思っている。最近会ってきたかつての友人の静かな死に顔を思い出し、いますごいとこに行ってんだろうなあ、どんな景色を見て、どんなすごい体験をしてるんだろう、と想った。いってらっしゃい、楽しんで。気が向いたらまた遊びに来なよ。短かったけどあなたのことだもん、きっといい人生だったよね？顔で分かるわ。なんてね。

というようなのも人生で何度も見てくると、織田裕二さんみたいに３００年生きたい、もっとこの先が見たいとかは私にはちと思えない。謎こそ、神秘こそが最大の美だとアインシュタインも言ってたし。

ちゃんと痛んで苦しんでまんま老いてちゃんと今生を終えたい。痛みや苦しみはギフトでしたよ、神さま。私自身はゲノムりたくないや。

と思った瞬間頭の中で「よく言った」
とほほえむような声が大きく響いた。
私は「よくオンラインになる神さま」と思ってる。私は笑って、返した。
「だって神さま、あなたがくれたキッツいことはみんな、あとでそっくり宝石になったもの。身につけられるものじゃないけど。あなたがくださったんです」

マネキンのようなパーフェクトルックのシン人類が欲望のままに闊歩し、他の生命や自然を脅かし、自然の火龍も水龍も近年ずっと荒れ狂っている。
そして、、、その美しいガチセレブが美しいゴジラでも飼うのだろうか。突然変異の可愛いペットとして。

ヤマタノオロチ。
ヒュドラ。
ナスナス、ユニコーン。
そういう伝説上の生き物がその昔世界的にバーッと出てきた頃、その頃は、もしかして現代と似ていたのかもしれない。
特殊な生物がなんらかのヘマで現れ、ヒトはそれに立ち向かえ燃え上がれガンダムで撃ってきたのかも。ついでに必ず美姫や宝剣なんかをゲットしてたが。
ごうつくばりで勇敢でスケベなヒーローたちが。

突然変異の、首が何本もある蛇、龍、聖書の黙示録に出てくる獣、予言獣「件」、姿を消した数多の精霊たち。伝説の書に生きている。

心霊話でウケがちな幽霊は、「それ単なるゾンビだろ🧟‍♀️」みたいな、その心は常に『天城越え』歌ってるみたいな執着の塊。こわ！って思うより、情けな！と感じてしまう。幽霊にも、そんなものをリアルに怖がってそのことで実際に害を受けてしまってる生きてる側の人も。

心をパキッと抗菌コートしたらんかい。

数千年前、古代文明の頃の地球。
いくつかの天変地異、不思議な化物・生物の登場と退治譚。
いまに似ている。
退治の対象がナノの世界に移っただけで。
「退治」？
退治して保護して。保護、退治…？

助かりたい？
３００年生きたい？
きちんと生きて死にたい。ちゃんと枯れる面白さ、痛みと戯れる自由さ、それを心の調整に使える楽しさ。

私は毛布にもぐりこんで、iQOSをくわえて幸せに目を閉じた。
私はノーゲノム編集でお願いします。
急いで行くわけじゃないけど向こうには会いたい人もけっこういるんでね。ちゃんとやりたいんだ。生き切ることは。
きっと会えたら笑って言える。
「いやあーもう大変でしたよ先輩❗️」って、飲み交わしながら。