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怪談水宮チャンネル⑤

八月葉月もいよいよ終わりですね。


①タケコプター

数年前の話である。
住宅街を散歩していると、空中3メートルくらいの所に何か、ある。
小さな双葉がくるくる竹とんぼのように回転している。その場でずっと。
上には蜘蛛の巣が作れそうな木立も電線もなく、その葉っぱはずっと浮いて回転している。
観察していても、なぜそうなっているのかついに分からなかった。

②ドラマー泣かせ

中学生の頃。もう府中に越していた私たち一家。年子の弟は私の悪影響を受けロック好きになり、役所の張り紙でドラムを譲ってくれる人を見つけて譲り受け、叩き始めた。
ドラムセットは一階の、ピアノがある元客間に置かれた。あー、今日もXの紅叩いてるなーうるせーと昼寝していると(慣れてしまった)、突如ドラムが止み、血相を変えた弟がドドドドと私の部屋に入ってきた。
「ね、ねーちゃん、ねーちゃん
‼️」
「なにー」
様子がおかしい。
聞くと、演奏中オカズ(フィル・インのこと)を叩こうとタムタム(スネアの前に設置される小さい幾つかの太鼓)へスティックをやった時。タムタムは透明な素材だったのだが、その向こうから茶色い顔の男がこっちを見ていたのだ、という。


③夜泣き夜歩き

弟はストレートに霊感の強い子だった。
夜、母に縋って泣く。
「ママ、屋根の上誰か歩いてるよ」
私も弟も知らなかったが、ちょうど同じ頃、骨董好きの父が私たちの生家、つまり父の実家である鎌倉時代の遺跡である池のある家から石灯籠を運んできて裏庭に据えた。見ると「文化◯年」だとかの記載があるがよく分からない。今もそのままある。


④金縛りのデパート

高校の同級生Yちゃんは車と「影の軍団」が好きなファンキーな女の子だった。霊的実体験豊富で、ことに毎晩らしい金縛りのレパートリーは他の追随を許さないものがあった。
ある晩、普段ならそういう時目を開けないのだが何故かつい開けてしまった。すると彼女の目の上を、明治だか大正時代だかの人力車の車輪のようなものがカラガラと通って行った。
またある晩は、部屋の中で話し声がする。多くの人がぺちゃくちゃ喋っている。
しかしそれは、日本語でも英語でも中国語でもない、とにかくそれまで一度も耳にしたことのない言語だったという。
彼女は30半ばの若さで、旦那さんと、まだ小さい二人の息子さんを遺して脳腫瘍で突然亡くなってしまった。


⑤当たる占い師

高校の時の歴史の先生はおばあちゃんだったが、年中うるさいバカ生徒どもをぴたっと静まらせる技があった。
「静かにしたら、授業後に一人観てあげるよ」
手相占いができる先生だったのだ。
生徒たちはただでやってほしいものだからいつも大人しく授業を受けた。

受けた女の子の一人Hちゃんは、おしとやかでおっとり系、性格も生活も穏やかでのんびりだったが、先生は彼女に意外なことを言った。
「あなた波瀾万丈かもしれないね。怪我に気をつけなさい」
生徒たちは皆誰もピンとこようがこまいが、たかが占いと思っていたが、Hちゃんは…
その後少しして、彼女は某コーヒーショップでバイトを始めた。
その日別のバイトの男の子が、ホットドッグ用のウインナーを茹でるために熱湯を入れた大鍋を誤って彼女の両脚にぶちまけた。彼女はストッキングを穿いており…
入院する羽目になった。


⑥霊感インターン

歯科医に勤めていた頃、インターンが来た。
私らバイトと年も近く仲良くなったが、こいつが無類の怪談好き。先生が学会で留守にしている時の休憩時間などはいつもみんなで怪談大会。
そのインターンSの話。

「俺さあ、ここに来ること分かってたんだよね。ここに初めて来る前の晩に夢、見て。先生と挨拶して、あーこんな診察室なんだーって見て。ここに観葉植物があって、ユニットは三つあってとか。
翌日初顔合わせだったけど事前に夢で見たのとおんなじだった」


⑦霊感インターンその2

「俺さあ、料理とかしないんだ。全部コンビニで買ってくるからレンジしか使わなくて。
で、レンジって黒いじゃん?ある時そのレンジの前面に、足だけのやつが映り込んで、歩いてんだよね」


⑧ドッペルゲンガー

私は一度友人に、「あんた絶対あそこにいたよ」というのを聞いている。
そこに行くはずもなく覚えもないが、私は某駅の近くを歩いていたのだという。間違いない、と友人は言った。私はその時間、まったく別の場所で勤務中だった。


⑨立川諏訪神社

たまたま立川に行く機会があり、そのついでに寄った。
当時私は原因は分からないが目が潰れかけており、実家からも出なければならなかったが金も仕事もなく、途方に暮れていた。
神社にはなんの予備知識もなかった。
礼をして鳥居をくぐった瞬間から、むっとするにおい。
イヤではないが、男の肌のこなれたような。汗くさいとも違う。まあ男くさい。
手を清めていると上から「やり方がちがう!やり直し!」と声が聞こえたりして怖かったが、においもその怒声もいやではなかった。
参拝ではお願いことではなく決意を言った。うしろの杜から男の人たちの声がする。「おーおー」みたいな。あとで諏訪の神様の正体を知り、納得したが実際ににおいや声はしたのだ。
境内の片隅に、「目の神様」という小さな祠があった。当時書くことの夢があり、目が見えなくなってきていたことが忍びなく、願った。
「目の神様、私に目を返してください」
その直後仕事を得、結果家から逃げることができた。医者が匙を投げた目もウソのように治った。そして諏訪の神様は龍神。そこになぜ私が引っかかるかは、前回の水宮怪談チャンネルをご覧ください。

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