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反撃の狼煙、伝説のその先への道筋を示した『ゾンビランドサガLIVE フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ』

最終話直前に発表されてからというもの、「死んででも行ってやる」と心に決めていた『ゾンビランドサガ』のライブイベント「ゾンビランドサガLIVE フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ」を見て参りました。
今回のライブはフランシュシュとしては初となる二日間開催のライブだったんですが、結論から言えば楽しかったです。「生きている」という実感すら沸くような最高のライブでした。

何が良かったかというと色々あるんですが、「最高だったので死んでもいい」ではなく「生きて次の夢を見たい」と思えた点が一番よかったです。

行く覚悟が固まった理由

そもそもなぜ『ゾンビランドサガ』のライブに現地参加したのか。配信もあるし、ライブグッズも後日配送とはいえ確実に手に入るのになぜ現地にまで足を運んだのかというと、「幕張メッセでのリベンジライブ」だからです。

実は『ゾンビランドサガ』の幕張メッセでのライブは昨年三月にも予定されていました。
ですが、新型コロナウイルスの感染拡大に依る自粛で、開催直前になってライブ自体が中止に。知人からチケットを譲ってもらい、「やっとフランシュシュを現地で見れるんだ!」とワクワクしながら行く準備を整えていた私は大変悲しい想いをしたのでした。
そんな「『中止になったライブと同じ幕張メッセ』で、『フランシュシュとしては初の二日間開催のライブ』を、『ゾンビランドサガリベンジ』の後の面白い楽曲がたくさんある状況でやる」という事を告知されたら、それはもう「行くしかない」ですよ。
こっちは「『ゾンビランドサガ』完結記念イベント」みたいな1stライブ「フランシュシュみんなでおらぼう!」の最後のMCで、二階堂サキ役の田野アサミが言った「このメンバーで武道館に立ちたい。武道館に連れて行ってくれますか?」という言葉に、「面白すぎる。本当に行ったら滅茶苦茶熱い」とドキドキしたから応援してるんだ。
紺野純子役の河瀬茉希の普段の純子とは全く違う、パワフルで「浴びる」としか言いようがない破壊力のある歌声に圧倒されたところから始まってるんだ。あとゾンビもアイドルもコメディも宮野真守も全部好きだし、今回は最初から楪舞々役で花澤香菜の出演も決めてきたんだ。
行かない理由がありますか。むしろ「あらゆる交通手段が止まったとしても、行く方法を探す」でしょう。
そんなわけで這ってでも行く覚悟で、行って参りました。

全体の感想

こういうご時世なので観客側の全体の状況をしておくと、座席に関しては平常時に戻ったかなと思います。
「一席空ける」みたいなこともなく両隣に人がいる。ライブ中はスタンディングOKだけど発声は不可、徐々にではあるが戻そうとしている気がします。
ただこの状況を形成するのに興行側も苦労しているのが感じられましたね。物販は事前に整理券を予約する必要があるし、ライブチケットは電子チケット、入場時には問診票の提示が必須で、体温の測定もあり。ライブチケットには万が一のための追跡調査用に色々記入しなきゃいけなかったですね。
まあ参加そのものに厳しめの条件を課すからこそ、ライブ中は平時に少し近づける事ができるので、入場にちょっと時間はかかりますがこれはこれでいいと思います。

セットリストやライブ演出についてですが、『ゾンビランドサガリベンジ』最終話の「駅前スタジアムでのチャリティーライブ」をイメージしてもらうと分かりやすいかなと思います。
開始のカウントダウンの演出や一曲目が「REVENGE」だった点、「輝いて」が本渡楓のアカペラから始まること、山田たえのフレディ・マーキュリー的なコール&レスポンスがわざわざ演出として採用されているのもそういうことですよね。
一期曲はメドレー形式かつトロッコでの拾うになりましたが、大体聞きたいものは入っていたかと思いますし、この一年半ぐらいまともに見れていなかったトロッコは一日目で採用されていることに驚きました。

また衣装数がとにかく多かったのも今回のライブの驚いた点でした。
というのも、二時間半ぐらいのライブなのに五着ぐらい登場したんですよね。新規は三着ぐらい。つまり大半が新規衣装で、うち一着は「ぶっちゃけてフォーユー」の時のものなので、花澤香菜が参加できるような時しか使えないような衣装まで作成している。狂ってる……。
代わりに衣装チェンジのタイミングが若干多かった。
その時間をデスおじを演じた二人が登場してフリートークでつなぐ感じでしたが……進行台本がありそうな二日目はよかったですね。一日目はちょっと間延びしていた。まあこれは演出が悪いのでデスおじ二人は悪くないです。
ただ「デスおじ」という「最初期のフランシュシュファンが現地にいる」という状況が作れたからこそ、デスおじ二人が「自分達が声を出してアンコールするから、皆は手拍子で応援してくれ!」という演出が出来ていて、ここは滅茶苦茶良かった。作中にファンいることの強みを見た気がしました。
ライブ演出する側が主導するアンコールですが、この作品に限ってはこの演出を続けても良い気がしますね。

アンコール後はやっぱり一日目の山田たえ役の三石琴乃の登場と、二日目の映画化告知が強烈に印象に残ってます。
「徒花ネクロマンシー」のフォーメーションが違ったので、「今回のライブセットに合わせた演出かなー」と思っていたんですが、まさか三石琴乃を登場させるための演出とは考えてすらいなかったので、一瞬何が起きているのか理解できなくなりました。
周囲も同じような感じで、理解できた人から驚きの声が漏れ出てしまう。
映画化についてはある程度読めてた話ではありますが、流された時は「何が起きているのか」って感じでしたし、映画化決定でやっぱり漏れ出るという……。
「三石琴乃出した以上、二日目は宮野真守でも出さないと驚くところないぞ??」と言っていたら白竜と村井國夫はずるいですよ。笑った。

スタッフからのお手紙は「映画化決定しました」しか言ってないのも最高でしたが、兎にも角にも映画化発表の後で聞く「夢を手に、戻れる場所もない日々を」はまだ先があることを物語っていて心に染みました。

アンコールまでで印象に残ってること

アンコールまでで印象に残ってることを書き出しておくと、まず田野アサミのファンサービスが凄かったです。
元々ファンサービスが多い人ではあるんですが、トロッコだと本当に全方位に手を振ってくれるし、「風の強い日は嫌いか?」ではサビ前に「行くぞ」と掛け声を入れてくれるのでそこでテンションが一気に上がる。それでいて、周囲への気配りも欠かさないし、観客サイドの気持ちも汲んだ事を言ってくれる。そういう事が二階堂サキがやりそうなのがまた面白いんですよね

目当てだった河瀬茉希は『リベンジ』で追加された「50と4つの忘れ物」「激昂サバイブ」がやっぱり良かった。
河瀬茉希の良いところって「どこから出てるんだろうか、この声」と思うぐらいエネルギッシュで、低音域の力強さからくる「圧倒される歌声」だと思うのですが、ライブで見ると「聞く」じゃなくて「浴びる」に近い感覚を覚えました。見ていて少々の無茶ならできそうなぐらい腹の底から元気が出る。
割と不安定なトロッコの上で、手を振りながらでもあの歌声って何……?
生で見て滅茶苦茶好きになりましたね。もっと歌う機会が増えてほしい。

種田梨沙は気配りの人だったと思います。
ダンスも歌も安定感があるんですけど、さり気なく他のメンバーを支えてたりとかトロッコで片方に寄り過ぎていたら反対側に回って手を振るとか、そういうささやかで現地にいる人間ぐらいしか気づかないだろう箇所で気配りが光る。『リベンジ』でも割とそんな感じだったといえばそんな感じでしたが、見ていてよかったですね。

衣川里佳は「安心して見ていられるようになったので、より面白さが増した」という気がするライブでした。
今年だけで既に二回ライブをやっているので(3月のゾンビランドサガと、8月のウマ娘)、ある程度慣れてきたというのもあると思いますが、二日目のMCで「ゆうぎりの色気を出そうと頑張ってみた」と言っていたように「よりキャラクターらしく見られる方法」を模索し始めていて、場数を踏んだ事で役者として一段階進んだような気がします。特に「佐賀事変」の入り方は「ゆうぎりだ」と思える入り方で最高でした。

田中美海はまあこの三ヶ月ぐらい毎月見ていたとは言え、相変わらず凄いというか。「あれだけ色んなイベントに出ているのに、ここまで出来るのはよく分からない」という気持ちにさせられますね。
今回は「リトルパラッポ」があるので、ダンスとか滅茶苦茶大変だったろうに……。もう何ていうか「プロ!」って感じがあって楽しかったです。

ゲストですが、大空ライト役の阿部カノン君は「本当に人間の声帯から出せる声なんだ……」というのがまず最初に出てきて、耳を傾けているうちに「歌声が綺麗すぎて、聞き入ってしまう」という稀有な体験をさせてもらいました。出てくれてありがとう……。
そして花澤香菜ですが、「レッスンは二回ぐらいしか参加できてない」って本当ですか。ダンスレベルが結構高い楽曲なのに仕上がりすぎてて凄い。
MCで「フランシュシュの中に入っていくと、『こんなにレベルが高いの?』と思って舞々の気持ちがわかった」的な事を言っていたこと、「卒業します!」で幕張メッセ全体で「シェー!」をやらせたことを墓まで持っていきます。

あと三石琴乃さんですが、「フランシュシュのお母さん的な目線」で感想を述べていたことが面白かったし、「We Will Rock You」的なことをやって、「『ボヘミアン・ラプソディ』のライブエイドがやりたかっただけ」と思った最終話が回収されて楽しかったです。

「次がないかもしれないコンテンツ」

でも一番印象に残ってるのはやっぱり最後の挨拶でしょうか。
特に本渡楓の「頑張ってきた理由」と田野アサミの「次があると言うことの意味」とが印象に残ってます。

本渡楓の「頑張ってきた理由」は本当にそのままの意味で、「本渡楓はフランシュシュのライブにここまで努力できたのか」ということなんですけど、「何よりも応援してくれる人達に応えるため」というのが本当に良かった。
フランシュシュってダンスレベルが高いし、楽曲も難しいものが多い。本職が声優である本渡楓が「原作に忠実に再現する必要」って本当は無いと思うんですよ。ダンスとか簡略化しても良いはずなんですよ。
でもそれをやらずに出来るようになるまで頑張ってこられたのは、フランシュシュとしてステージに立つメンバー達やスタッフ、教えてくれるダンスの先生、そして見に来てくれる人達がいるからで、「その人達のためなら頑張れる」と語っていて、最初期から見ている身としてはここまで思ってくれていたことに泣きそうになりました。「映画も決まったので、源さくらともっと向き合っていきたい」とかも良かったですし、「次に会う時まで生きてください」はずっしりとしつつも、この作品らしいキラキラ感があって素晴らしい言葉だったと思います。

田野アサミの「次があると言うことの意味」は一日目も合わせての話なんですが、一日目の時田野アサミさんは「次は何も決まってない」とはっきり言ったんですよね。
今回のライブの後は何もないんだと。『ゾンビランドサガ』やフランシュシュがどうなるのか私も知らないんだと。はっきり言ったんですよ。その後、「でも応援の声が多かったら上の人間も心を変えるかもしれないから応援してほしい」と言って終わったんですけど、二日目で映画化が発表されて「単に知らされてなかっただけ」になった。
それを受けて一日目の自分を弄りつつ、「次があること」を噛みしめるようなことを田野アサミは言っていたんですが、「次がある」ということが本当に奇跡なんだと噛みしめるような内容で、応援する側に過ぎないにもかかわらず「無根拠に次があることを信じすぎている自分」を見つめてしまったんですよね。
私はプリティーシリーズのファンなので毎年一回以上はライブを見に行くんですが、どこか「次がある」ということに安心してしまっている。
もちろん次があることは良いことなのですが、一回一回のライブの奇跡性とか愛おしさみたいなものを、もうちょっと謙虚に受け止めた方が良いのでは?とか感じてしまいました。
だからこそ「次がある」というフランシュシュの『次』の中に、1stライブのときに言っていた武道館が入っていてほしいという田野アサミさんの願いに心を揺さぶられました。
「それが見たい」と思って応援してきましたけど、ここにきて1stライブの発言を拾って新しい約束にしてきた田野アサミには「ついていくしかない」という気持ちにさせられました。

結びに

この一年間ぐらい「ライブやイベントがスケジュールの中にある」ということの有り難さや自分の生活における意味を見つめ直すことが多かったのですが、今回の『ゾンビランドサガ』のライブはそこで見つめ直したものの価値を、改めて噛みしめるようなライブだったと思います。
生きてライブを見られるということ。生きて次のライブが楽しみに出来るということ。
本当に大事なことですね。ライブが私を生かしてくれている。

『ゾンビランドサガ』も「リベンジを超えたその先」を示してくれました。
映画が公開されるまで、そして武道館でいつの日かライブする時まで、泥を啜ってでも生きるしかないですね。生きろ。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。