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ウマ娘好きは『トップガン:マーヴェリック』を見に行った方がいい

『ウマ娘プリティーダービー』と『トップガン:マーヴェリック』がコラボすることが発表されたのは2021年8月28日の「ウマ娘 3rd event WINNING DREAM STAGE」1日目のことだった。
アプリ版がハーフアニバーサリーを迎えた直後に開催されたイベントで、突如『トップガン:マーヴェリック』の予告が流れ、最後に「コラボが決定して、マヤノトップガンが宣伝パイロットに就任!」と発表された時の気持ちは今でも思い出せる。
爆笑を乗せた「わはは! やりやがった!やりやがったぞ!」である。
1995年JRA賞最優秀4歳以上牡馬に名を残す競走馬マヤノトップガンの名前の由来は1986年に公開された映画『トップガン』に由来している。
『トップガン』から名前を戴いたマヤノトップガン。そんなマヤノトップガンも出走し、多くのトレーナー達に「ウマ娘・マヤノトップガン」として愛されている『ウマ娘プリティーダービー』とコラボするのは、流れとしては自然なことだろう。「宣伝パイロット」というのも『ウマ娘』の世界観を考えても美しい着地点であり、文句の付け所がない。強いて言うならインパクトが強すぎて二日目の発表内容が霞んでしまった事と、4th eventでトム・クルーズの来日決定が発表され、ファンにいい意味での混乱を招いたぐらいである。
ともあれ、『ウマ娘プリティーダービー』と『トップガン:マーヴェリック』がコラボし、マヤノトップガンやトウカイテイオーやエルコンドルパサーやサイレンススズカがジャパンプレミアで一緒に写真を撮ってくれたトム・クルーズの事を考えると、元々見るつもりであったとしても「見に行かないとな……!」という気持ちが自然と出来上がっていく。おまけに初日に見た人達の評判も上々である。
そんなわけで『トップガン:マーヴェリック』を見てきたのだが、「こんなにも完璧なエンターテイメントがあっていいのか」と感動するほど面白かった。
だが、それ以上に熱かったのは『ウマ娘プリティーダービー』と『トップガン:マーヴェリック』のコラボがただ「トップガン繋がり」というだけではなく、「作品のテーマ部分までしっかりとリンクしたコラボだったのではないか」と思わせてきたところだ。

競走馬の伝説を復活する『ウマ娘プリティーダービー』

『ウマ娘プリティーダービー』は実在する競走馬達の魂を受け継いだ「ウマ娘」の活躍を描いた作品だ。
ゲームやアニメ、漫画などその展開は多岐に渡るが、そこで描かれている物語は概ね「現実世界で活躍した競走馬達の伝説」に基づいて描かれている。例えばヤングジャンプで連載している『ウマ娘シンデレラグレイ』はオグリキャップの人気とクラシックの追加登録制度の導入について描かれているし、アニメではスペシャルウィークの「日本の総大将」としての活躍とトウカイテイオーの復活劇が描かれている。ゲームでは新規キャラクターが実装されるたびに「このエピソードを拾ってくるとは」「こういう解釈にするのか」と関心する声が多い。
多くの人の心を熱くさせた伝説や、手に汗握るほどの興奮を生み出した浪漫は決して色褪せることはない。そして時代を超えて愛され、今を生きる人達の心を熱くさせる。しかし語り継ぐものがいなければ、輝きは褪せずとも時の中に埋もれてしまう。
『ウマ娘プリティーダービー』が面白いのは、人の想いを乗せ時代とともに駆け抜けた競走馬達の伝説を、モデルになった競走馬を知らない人達にも受け入れられるように脚色することで彼ら/彼女らの伝説を、今を生きる人達とともに語り継いでいこうとしている。
「過去の伝説を今を生きる者達の伝説にしよう」
そんな「伝説を過去になんかしない」「人を熱くさせた伝説や浪漫は、当時を知らない人達にも愛されるものなんだ」という信念が『ウマ娘プリティーダービー』の中核にあり、その本気さとひたむきさが多くのファンを引き付けている、と思うのだ。

マーヴェリックという伝説の凱旋『トップガン:マーヴェリック』

『トップガン:マーヴェリック』も『ウマ娘プリティーダービー』と似ている。
本作においてマーヴェリックは過去の伝説だ。彼の功績は知られているが、今を生きる者達にとってマーヴェリックの存在は既に過去のもの。エースパイロットを育てるカリキュラムを終えたパイロット達は高く評価していないし、海軍上層部もその点は同じだ。マーヴェリックは上層部からも過去の存在だと思われている。
それでも彼が空を飛ぶパイロットでいられるのは海軍大将にまで上り詰めたかつての戦友・アイスマンの計らいに過ぎないのだが、そんな「過去の存在」「かつての伝説」として扱われていたマーヴェリックが物語終盤では「伝説のパイロット」として多くの人の前に凱旋する。不可能を可能に、「パイロット」の可能性を体現した存在として戻ってくるのだ。
マーヴェリックという伝説の凱旋は、まさしく『ウマ娘プリティーダービー』が描いているものと同じではないだろうか。「過去の伝説を今を生きる者達の伝説として描き直す」という点では『ウマ娘』も『トップガン:マーヴェリック』も同質のものなのではないだろうか。
またそう捉えるのなら、『トップガン:マーヴェリック』と『ウマ娘プリティーダービー』のコラボは両者の内実を伴ったものであり、これ以上ないほどパーフェクトなコラボなのではないか、と思うのである。

トップガン、競走馬、ウマ娘、トップガン:マーヴェリック

また私としては「『トップガン』が競走馬マヤノトップガンに与えたもの」を「ウマ娘マヤノトップガンが『トップガン・マーヴェリック』に返している」という見方も出来る点も興味をそそられる。
前述したようにマヤノトップガンという名前は『トップガン』があるからこそ生まれたものだ。そして「マヤノトップガン」と名付けられた競走馬が、今日まで語られるほどの「伝説」を作り上げ、多くの人達に愛されたからこそ、『ウマ娘プリティーダービー』でウマ娘となり、その伝説を直接は見たことがない人達にも愛されるに至った。
そんなマヤノトップガンが、36年ぶりの続編で、「マーヴェリックと言う伝説の凱旋」を描いた『トップガンマーヴェリック』の宣伝パイロットになったのだ。
『トップガン』から名前を戴いた伝説が、『トップガンマーヴェリック』と言う作品を応援しているのだ。
こんなに面白いことがあるだろうか。
マヤノトップガンを推している人達が羨ましい。羨ましすぎる。競走馬でもウマ娘でもいい。こんな奇跡に自分の推しがいる。それだけで「勝ち」だ。何に勝ったのかはこれを書いている私にも分からないが。

映画館にテイクオフしてほしい

これを書いているタイミングで大ヒットを記念して、入場者特典としてポスターカードの配布が発表された。マヤノトップガンとトム・クルーズがプリントされたカードである。

これ目当てでも構わない。前作を見ているかどうかも気にしなくてもいい。
『ウマ娘プリティーダービー』が好きな人は早くこの映画を見てほしい。
そしてこの映画を見て、今起きている奇跡の価値を噛み締めてほしい。
こんなことがあるんだって。こんな凄い事があるんだって感じてほしい。
それもこれも全てトム・クルーズのおかげである。
トム・クルーズ、Thank you。
貴方は伝説のスターだった。そしてこれからもきっとスターなんだろう。




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