【AIがすべての芸術を生み出すようになった社会】第18話

「どういう意味だ? これはAIが作った曲だ。冬眞というのは、冬眞唯戯菜とうまいざなか? 御堂学園の生存者の一人の」
「う、うん……生存……生きてるって聞いた気がする」
「ああ。彼はお前よりも少し早く特別警務班の管轄に入った特務級の感情表現者だ。生きている。槇田特別刑務官のバディだ。しかし、どういうことだ?」
「……、……ああ、そっか。生きてるんだもんね。きっとヨセフと会うんだね」

 篝の言葉に、青山は驚いた。

「会う? 篝、お前はそもそもヨセフを知っているのか?」
「うん。青山は知らないの?」
「詳しく話してくれ」
「それは――」

 ビービービーと首輪が音を立てたのは、その時のことだった。

『再生制限がかかっている記憶部位及び声帯変動を感知しました。続きをお聞きになる際は、ランクSSAの許可を取得して下さい』

 首輪から響いてきた自動音声に、青山が目を見開く。すると首輪を押さえた篝が、苦しそうに呻き、直後崩れ落ちた。慌てて立ち上がった青山が抱き起こすと、薬を注入された様子で、焦点の合っていない篝の瞳が見えた。

「許可申請は、現時点では不要だ。即刻注入を解除。フェーズを戻してくれ」
『畏まりました』

 すると気道圧迫と薬物投与がとけたようで、必死で篝が息をした。

「――AI……が、私の小説……盗んで……」
「篝?」
「……PNまで同じお話なんて、あるわけが……」

 そう呟くと、ガクンと篝の体が揺れて、そのまま意識を手放したようだった。
 今聞いた言葉を脳裏で反芻しながら、青山はソファに篝の体を運んで横たえる。

 それから自分でキッチンへと立ち、途中まで出来ていたラザニア作りの続きを行うと決める。

「ああ、そうだな。PNまで同じなら、それは盗作だ。小説ならば。そして音楽で、AI作として芸術家の生みだしたものが流れているならば、それもまた盗作行為に等しい大問題だ。だが、意味が分からない。芸術家の作品に感動する人間など皆無に等しいのに、AIが盗作? そんな馬鹿な」

 その後オーブンに入れたラザニアが完成する頃、篝が目を覚ました。


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