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【詩のようなもの6編】 the walk


【the walk】

割れたペン先に似たり寄ったり
木々の一つになるまで枝分かれ
繰り返す背伸び 持て余す天邪鬼

「夢は要らなかった」
スクロールするように歩き続けて
そんな言葉が出てきた

馬鹿馬鹿しい 憎々しい
再現出来ない今日までの筋道

慟哭 味わった分だけ
瞳の奥 セピア色を焼き付け
彩度高めの笑い声探して歩く

まだ自分を許してない
許す気もない 抗っている最中

青春とは言えない時の瞬き
コンビニ向かう感覚で歩き続けている

【晴れた日の夜】

誘因招く溜飲
竜宮城とは真逆の場所で
歳老いた姿になって
同じ道を歩く同士

帰る場所も
行きたい場所もない

かろうじて残る残骸に鞭打ち
割れた爪が示す過去の記憶

冷たい風 温かい人 
泣きそうになった
でも泣けなかった
心臓は引き締まった
身体は重かった

何処へ行こう
何処へ行こう
自問自答の末 
光に群がる虫になる

気づく 虫に食われた福
人情家の面目玉 非力 怪力
いつも息切らし心を潰し潰されるまで

泣いて笑って
一緒に居てくれる人
付かず離れず 共に火を灯す
そんな雑多に囲まれた晴れた日の夜

昨日観た映画と何ら変わらない
馬鹿馬鹿しいくらい素晴らしい自分が
心臓を動かし動かされている

【猫になりたい男の子】

抗う術も馴染む術もない
まだ発展途上中の男の子

信じていた世界は
少しずつ細胞を入れ替えながら
夢が細く濃く

日曜日が特別じゃなくなって
あの場所が別の景色になっていく

繰り返す切り取り
"All is kill you"
その精神が健在なうちは
呪った分の穴が未来を影に落とす

代償のない自由はどこにもない
生まれた瞬間から片足は取られている

怖いのに 痛いのに
鋭い目つきで背後から寄る猫が
あまりに可愛くて優しくて

まだ心は浮き雲のように
道を決めず歩みを止めず
猫を真似している

荒野に佇むあの花を思い出しながら
時の流れに優しいメロディー

猫になりたい男の子の鼻唄が
優しい心を繋いでいくのを
そっと見つめている

【死海の仇波】

時に仇波 
海に吸い寄せられて
寄う波に足を渡す
誰も何も言わず

焦がれた思い出
その全て無に返されて
人の世を知り物を知り
浅瀬に仇波

【慣れて、過ぎて。】

手慣れた仕草で淹れたコーヒー
猫背でいつもの机に向かい
ズズズとちょびっとずつ飲む

少し咽せた後で
鼻を触り頬を触り
うーんと唸り上を向いて
下を向いて腕を組む

昨日のドラマの会話
見た時は何とも思わなかったのに
急に今疑問が湧いてくるのは何故なんだろう

目の前の課題は進まず
下降するモチベーション
お腹が空いて残りもので済まし
引き攣った笑顔は後悔を呼ぶ

1日の短さ誰のものになった?
座ってた椅子に残る温もり
柔肌を縁取る夜の光色
明日こそ自分のことを...

明日も立っているかわからない
曖昧な誓いを水面に浮かべ
過ぎた季節に枯れた喉を高鳴らす

【再会と祈り】

待っててくれてありがとう
相変わらずの身なりでの再会は
いつもの小汚さと新鮮さにときめく

思いの外 今日を楽しみにしている
曇天の夜を超えた自分に
何を期待しているのか

流れ星を探すように
木漏れ日を迎えるように
遠い記憶に祈るように
何を待っているのか

拓いた世界に取り残された
無人の港町 靡く大きな旗は
誰を出迎えようとしているのか

答えはまだ出てこない
ただ動き続けている
その夢のような現実が
今日を久しぶりに楽しくさせている


最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青