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【詩のようなもの6編】 希求



【希求】

待てど暮らせど 願いは遠く
もうすぐ今年が終わる 

君はどんな年だった?
一日千秋はまだ続いているのかな

腕を撫して結局口あんぐり
雲ひとつない青空眺め惚けて

開けたドアは建て付け悪くなり
揺らいだ心は八の字を描いて年の瀬

今年もあと僅かだというのに
捨てられない夢へ性懲りも無く希求する

【駅前ショッピングモール周辺】

朝10時の駅前ショッピングモール
タイムセールを狙う母達の澄まし顔
階段前から皆元気

昼過ぎの路上パフォーマー 弾き語り
スマホ片手にチラ見して通り過ぎる人々
ぼーっと真顔で観る子供達

その横 営業トーク続けるスーツ姿
悪態と唾を吐く大柄の柄シャツ姿
少しずつ路地裏が賑わい出す

公園のベンチ 登下校中のカップル
街の雰囲気に染まる

本数の減ったローカルバス 
その分、人は増えて
老夫婦は歩くことを選び
犬と猫に挨拶

夜10時の駅前ショッピングモール
閉店前に駆け込む急ぎ足 タクシー探す千鳥足
信号待ち 皆少し疲れて
眠るように1日が終わる

【時代遅れの僕】

贅沢な悩みなのは重々承知
それでも世間体を気にする今日の僕

世代括りと対立構造を嫌いながら
そんなタイトルばかり目に付く今日の僕

場違いな場所で知ったかぶり
的外れな言葉で場を凍らす今日の僕

自分が一番ズレているのに
結局のところ時代遅れを認められない
そもそも気づいてすらいない今日までの僕

【無意味に正しく】

どうでもいいはずなのに
受け流せない間違い
正しさより感情を
感情の後の正しさを

雨を避ける為に差す傘
回しながら差す必要はないけれど
そんな感じで無意味に正しく

信じられない話ほど頭の中を占めて
物語と真意が欲しくなるから
上書きするように刻む
無意味な正しさを

無意味な今日に
意味を見いだす君が現れるまで

【契機とケーキ】

「恋愛ってさ生活が成り立ってて
自分の存在が確立してないと出来ないね」
崩れたケーキ食べながらする失恋報告で
君はまた成長しようとしている

次の出会いを大事にしたいが為に
より仕事に打ち込み充実した日々の隙間で
最新の恋愛小説を読み漁り
偶然と必然を混ぜた契機を探し
君はまた変わっていく

年が変わる頃には僕の知る君はいない
だからまた自分だけの危うさと素晴らしさ
気付けるようになったら…
そのきっかけをケーキでも食べながら聞かせて

【日の入り】

積年 轟き ヒビ割れて
水槽の水を入れ替えるように
移り変わる 僕らの言葉

今年が終わる
年が変わる
街は鳴く
君想う

来年こそは
良い年でありますように

雪が降る
境内の焚き火は昇る
明日を待ち侘びている
君に逢いたいと走り始める

日毎 錆びつき 捨てられて
ついた餅が焼き上がるように
膨れ上がる 僕らの心

怒気を強めた
資本主義に侵されながら
陽だまりのような初日の下へ



今年もありがとうございました。
読んでくれた方が少しでもポジティブになったり
共感できる部分があったならそれがこちらとしても嬉しいことです。

また気が向いたら読みにきてください。

水宮 青