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【詩のようなもの6編】 真夜中の形容詩



【真夜中の形容詩】

滅入る 滅入る
スリーセブン揃う時ほど不吉
拭えない寒気 ヒリヒリと

悔いる 悔いる
明日を誰のものにもしたくない
けど眠気に勝てず スヤスヤと

熱にうなされ 手足は冷え
妙に肌がサラサラ ポカポカ
付いてくる影が何かを訴えている

空費した夢の果て 
ポツンと佇む暮れ

符合する形容詞 
増粘剤のようにベッタリ

削る 奔る 翻す
心がひとりぼっちで消える前に
往々と 揺ら揺らと

【judge】

自由を得ようとした筈が
見えない何かに握られて
胃腸が弱ってく一方
逃げ場がない支配構造
八方塞がり

必要なのは働くロボットなのか?
要らないのは飢えた獣なのか?

ズレを信じるビルの街で見下ろす
理不尽と名目

探すように壊れていくんだな
殴るように描くんだな
不遡及の時間

僕は人間 君も人間
見えない手が社会を作るよ
無意味な正しさはまた移ろうよ

【うねるこころ】

缶詰めにしてしまったままにしたい
そんな景色が続いた

蛇口を捻らなくても
流れ続ける罪悪感は溜まる一方
泣きたくなっても泣くのすら
烏滸がましいと思ってしまう

その代わりなのか
堰き止められていた時流が
良識も悪知恵も無力も刻み
何かの形で示されていく

こびりついている温かさと残酷さは
蓋の出来ない今日を光と闇に変える

誰かが鉛筆を削り
誰かが音を鳴らし
誰かが声を上げて

うねるこころ 波の如く

【ポケットの夢】

故障したエアコン
遠い蝉の音
速い飛行機雲
裂けた夏を演出するように
避けた畦道と君との帰り道

冬の喫茶店
街の時計塔
人の減った商店街
川縁に流れ着いたゴミ

駅前の渋滞網のように
記憶が蠢いて古くなって
原風景が加速度を増して
喉奥のえづきが胃を縮める

誤診も誤審も誤算も許されない
デジタル音とヒューマンエラー
近場の人集りは何なんだろう?

ポケットの中の夢は
自分すら気付くことなく
そっと悪意に満ちている

【某の戯言】

時代は逃げるように変わり
アレは何年前の話だろうか

年が変わったその日に
色々思い出して色々失ったんだ

胃をギュッと握られるような
暗い未来しか信じられなかった

貼るカイロで一時 身体を温めた
ビタミン取るように優しい絵に触れた

それでも確かな現実は脳みそ揺らし
心が迷子になるのを傍観しか出来なかった

泣きそうになりながら元気な顔で
いつもの生活へ向かい続けたけど…
もうそこには戻れないから
また逃げるように変わっていく

【another world 】

始めは痛みを消したいだけだった
耳目の欲に突き刺すように
何も考えずに未来へ

武器だった傷跡は時代を変えた
受け入れられた 許された
同時に過去に縛られていた

年明けて前触れのないアナウンス
面目を一新する街の中心部

地続き 破壊と再生
信じていたことが流されていく

終わらないものはない
総てを無に帰すように
人は水を入れ替え続けて
波風に右往左往

寿命尽きるその日まで
退屈と弱い自分から逃避行して
次の世界へ


最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青