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てぃくる 260 ドリーミー

「ええと、こんな風に全体にふわっとしたドリーミーな感じで」

(ランタナ)


「は、はあ。どりーみー……ですか」
「そう。ちょっと毛が硬いから、セット大変だと思うけど、あなたの腕を信用しますので」

「わ、分かりました。努力します」
「お任せください、じゃないの?」

「お客様のおぐしはなかなか……扱いが……」
「そこをどうにかするのがプロじゃないの?」

「……ええ、そうなんですけどね」
「大丈夫?」

「正直に申し上げてよろしいですか?」
「……」

「剣山をスチールウールにする技術は、私どもには……」
「もう、いいっ!」

 ばたん!!

「店長……お客様を怒らせたみたいですけど、いいんですか?」
「ああ、彼女はこのあたりのヘアサロンのブラックリストに載ってるから」

「えええ!? クレーマーなんですか?」
「クレーマーってわけじゃないけどさ。あれは髪なんかじゃないよ。普通の美容師じゃ絶対に手に負えない」

「そんなに硬いんですか?」
「鋏の刃が欠ける。切るのにニッパーが要るんだ。鍛冶屋の領域さ」

「げ……」
「パーマなんか論外だよ。あれを柔らかくするのなら、硫酸ぶっかけて煮ないと」

「うげげ!」
「それでも、果敢に挑んだやつがいてさ。こんな感じに仕上げたんだ」

(カワラタケ)


「黒ドリーミー……ですね」
「悪夢だろ?」


短夜や残夢整理に明け暮れる

(2016-08-26)

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