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てぃくる 612 ビールと枝豆

「うーん、ビールに枝豆といくにはちと寒いか」
「てか、ビールもないのに枝豆だけこんなに出されても」
「心配するな。こいつは枝豆ですらない」

(アレチヌスビトハギの莢果)


「なぜビールに枝豆と言われているか、知ってるか?」
「さあ。俺はがっつり食って飲めればなんでもいいっす」
「じゃあ、俺の説教をたんまり食らって、涙を飲め」

「ビールはエビス、枝豆はだだちゃ豆に限る」
「あんたのえびす顔なんか見たことないっすよ」
「だだこねるおまえは毎日見てるけどな」

「コップビールに丼枝豆か……わびしいなあ」
「来週のあんたの分は、おちょこビールに枝豆一つっすよ」
「その次の週は、確実にエア『ビールに枝豆』だな」

「ビールにちくわでも、お湯割焼酎に枝豆でもいいんだよな」
「俺も、ペアを換えたいっす」
「しゃあないだろ。二人しかいない部署なんだから」

「枝豆の塩気がビールをはかどらせ、ビールの苦味が枝豆の甘みを引き出すんだ」
「俺ら、相乗効果ゼロっすね」
「でも、分けたらゼロ以下だろ?」

「結局腹ン中では一緒になるのに、ビールに枝豆を突っ込むと不味いんだよな」
「俺らは一緒にやれないはずなのに、同じ部屋に突っ込まれてるっす」
「どっちも不味いから、一緒にしとけってことだ」

「ビールに枝豆と来れば、あとはかわい子ちゃんだな」
「無理無理。俺らの隣に座るくらいなら死んでやるって言われたっす」
「おまえもか」

「とりあえずビールってのはあっても、とりあえず枝豆ってのは聞かんな」
「とりあえず仕事ってのは、もっと聞かないっす」
「とりあえず揃ってクビはありそうだが」

「最近の若いもんは、ビールも枝豆も嫌がるんだよな」
「いやー、ビールも枝豆も好きっすよ。横にいるやつがそれを不味くするだけで」
「おまえ、いくら部長だってその言い方ぁないだろ」

(2019-10-21)

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