てぃくる 849 青
色というものは無数にある。それらは滑らかに連続し、特定の呼称に固定することができない。
たとえば青。
空の色と讃えられるものの、空の色はもちろん青一色ではない上に、青であってもその色調を一つに固定できない。無数にある空の色模様を「青」の一言で片付けることにはしょせん無理があるのだ。
しかし実際のところ、色の概念は極めて単純化されやすい。青、赤、黄の三原色と白黒が頻用され、何か色表現を探すとしても、それらに緑や紫の中間色群が混じる程度。
我々は日常生活を送る上で、色の表情を極めて狭いレンジ内に押し込んで暮らしていると思う。
用語を複雑にすればするほど利便性を損ねるという事実は、確かにある。だが、実際の世界はうんざりするほど多種多様なのだ。それを無理に単純化しようとすれば、事象と思考の落差が大きくなりすぎて逆にしんどくなってしまう。
断捨離やらシンプルイズベストやらというライフスタイルを全否定するつもりはないが、脳内くらい散らかしっぱなしにしておいてもばちは当たるまい。
そんな益体もないことを考えながら、抜けるように青い空を見上げる。
え? 偉そうなことを言っておきながら、結局青い空かって? まあね。青としか言えない空もあるからさ。
青くなくとも冬青と呼ぶ こは如何に
(2021-11-02)
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