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絵本担当とお客様①

「洋服は売るときにビニールに入っているのに、何でここのお店は本をビニールに入れていないの!」

かつて、お客様からこのようなお叱りを受けた事があります。
洋服≒本?
ビニール≒シュリンク?
と色々?マークが頭の中に浮かびましたが、ひとまずお詫び。

お子さん用に購入したかった本が残り1冊しかなく、それが未シュリンクで傷んでいたが故のクレームでした。

ただ、その方が次に来店した時(クレームを言われたお客さんの顔は結構覚えています)
カートに乗ったお子さんに未購入の未シュリンク本を持たせ、店内を回遊。結局持たせていた本は買わずに退店。
見本ではなかったその本は、もちろん傷んで売物には適さなくなりました。

このお客様の例でも明らかですが、
『自分が欲しい本はキレイであってほしい』
でも、
『店内の色んな本は自由に読みたい』
というのが最終的に書店に対してお客様が望まれている事。

この矛盾する要望に応える為に書店員には
店内の膨大な書籍のシュリンク掛けと、シュリンク外しが課されます。

シュリンクにかける労働時間のロスの問題
とか、
シュリンク用ビニールの環境への負荷の問題
とか、
勝手に外されるシュリンク問題
等、様々な負の側面はここで問題にする気はありません。

シュリンク絡みで私がいつも考えてしまうのは、
お客様にとっての必要なサービスってなんだろう?
ということ。

私は絵本担当なので、毎月かなりのタイトル数の新刊絵本や補充用の絵本を発注します。そして、新刊のタイトルごと1冊以外は補充用を含め全ての絵本にシュリンクを掛けます。

理由は、コロナ禍だからということと、当然ながら本の傷みを避けるため。

しかし、その結果、棚差し用に1冊だけしかない絵本はお客様が自由に内容を確認できないようになってしまいます。
(面陳や平積み用に複数冊在庫を持っている絵本はなるべく見本を置いて中を見られるようしていますが)

『何か新しい本がないかな』とか、『気に入った本に出会いたい』と来店してくださるお客様のために、色々な絵本に出会って頂きたいと思って発注した絵本なのに、自分たちでそれを邪魔しているという矛盾。


絵本の特徴として、人気本が多数あり、そして単価が高いということがあります。

30年以上売れ続ける古典的なロングセラー絵本も置きたいし、最近話題の海外絵本も外せない。おすすめ絵本としてwebや雑誌で紹介されている絵本も置いておきたい。その上、大量に発売される新刊絵本も1冊は置いておく…となるとどんどん中身が見えない棚差し本が増えていきます。

また、コミックや実用系の児童書と比べると1冊の価格が大体1000円以上と高価になるため、返品リスクも高くなるという、シュリンクせざるを得ない書店側の問題もあります。

もう一つの特徴として、絵本は刷り数が少なくて、一度返品してしまうと2度と手に入らなくなる絵本が多いこともあります。

特に、海外の翻訳絵本はそういうものが多く、傷んでしまった絵本を返品して再入荷しようとしたら、出版社の在庫も無く、重版の予定もないと言われた事が何度もあります。

どの絵本もオススメしたいし、手に取ってもらいたい。
しかし、未シュリンクのまま1冊しかない貴重な絵本を棚差しにしておき、万が一傷んでしまったら、肝心な購入希望のお客様に傷んだ本を売ることになってしまいます。
これは、絶対に避けたいこと。

上記の理由で絵本にシュリンクせざるを得ない事実を自分に納得させながらも、
でも、お客様は中身を見てから買いたいだろうし…とも思う。
本当に堂々巡りです。

理想は、全ての本を見本用と販売用に2冊ずつ在庫しておくことなのかもしれません。
ただ、これは予算的に難しいのが現実です。

いま時点での解決策として、
購入前に中身を確認したいお客様には、
レジでシュリンクをお外しします…と声がけしています。

ただ、わざわざ開けてもらってまで中身を見せてもらうのは…と遠慮してしまうお客様もきっといると思います。
また自分が書店では静かに気ままに自由に本を選びたい方なので、声掛けにも慎重になってしまいます。

購入時にいつでもキレイな本を買うことが出来ること
or
中身を確認したいときに気軽に本を手にとって見られること

どちらがお客様のニーズにより近いのか悩ましい所です。


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