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ドイツでメジャーな3つの心理療法

ドイツでは保険適応となるセラピーには大きく分けて3つの種類¹がある。

PsychiaterとPsychotherapeutは以下の3つのメソッドのどれかを使い治療を行う。PsychiaterとPsychotherapeutの違いがわからない方はこちら。

(1)行動療法(verhaltenstherapeutische Psychotherapie)


日本で主流となっている療法。基本的に今までの人生の中で意識的または無意識的に学んきたプロセスの結果として現在の症状が出ているという見方をする。

治療の始めに患者さんと次のことを見る。今まで生きてきた歴史の中、また現在の生活の中のどんな条件や環境が疾病の発症を招いたのか。そして、何がその症状を持続させているのか。この考えを元にセラピーの目標およびプランを一緒に決める。行動療法では、患者さんが自分の行動、考え、感じ方を自発的に変えていけるように治療を行う。

まとめると、行動療法とは、その名の通り行動を変えていくことに重点を置いた手法と言える。傾向として、セラピストはアクティブにセッションを構成し、明確なプランに沿ってセッションを行う。また、セラピー外の時間で行う宿題等の具体的なツールを使う。

(2)精神力動的心理療法もしくは精神分析的深層心理療法(tiefenpsychologisch-fundierte Psychotherapie)

私が行っているのはこの手法。精神分析(Psychoanalyse)から派生したもので、日本では行動療法ほど有名ではないが、ヨーロッパや北米、南米でも盛んに使われている手法(ドイツでは行われるセラピーの約50%はこの手法であり、もう半分は上記の行動療法)。

この手法は、疾病の発症を次のようにとらえる。人間は育ってきた環境の中で特定の防衛機能を無意識に使い心のバランスを保ちながら成長する。その生き方が時間とともに人格となる。その個人の「生き方」は平穏な人生を送っている間は問題なく機能するが、極度のストレス状況では負担をカバーしきれなくなることがある。また、幼少時代の(主に親との)関係におけてある葛藤が克服されていない場合などにも、精神疾患が発症する。

具体的には、セラピストが患者との関係の中で投影分析等をしていくことにより、無意識の葛藤を理解し、患者と共に理解や気づきを深めていく。それにより葛藤を解消したり症状を和らげたりし、最終的に生きやすくする。セラピストは行動療法に比べるとアクティブではない。宿題などは出されず、セッションの中での対話およびセラピストとの関係性自体が主な治療のツールとなる。

以下(3)の精神分析的療法との違いは、セッションの回数が少ないこと(週に1回)と治療のセッティング(向かい合って座った状態)。

(3)精神分析的療法(Psychoanalytische Psychotherapie)

有名なフロイド(Freud)が編みだした手法(歴史的な背景などついては多くの書籍、インターネットサイトですでに扱われているので割愛)。

症状のとらえ方は上記の精神分析的深層心理療法とほぼ同様。上記の2つの手法との大きな違いはセッティング。患者はベッドのようなもの(Couch)に横たわり、頭部あたりに置かれた(別の椅子に)分析家²が座る。日本ではこの手法でも週1回の治療を行っているが、ドイツでは週2回から4回が基本。

基本となる手法は自由連想法と呼ばれ、患者は浮かんだことをすべてそのまま言葉にするよう求められる。分析家は完全に聞き役にまわると言っても過言ではない。とは言え、分析家はただ聞いているだけでなく、逆投影分析、防御分析、連想等のメソッドを使う。実際にどのように行うのかというのは専門的な話になるのでこれくらいにしたいと思う。

結論

日本人の方がドイツでセラピーを受ける場合(1)行動療法か(2)深層心理療法が適している。特に日本人がドイツ語で(3)精神分析的心理療法を受けるというのは、ハードルがかなり高い(言葉の問題だけでなく、症状や患者さんのタイプとメソッドとの適応性もあるが)。興味がある方は、セラピストを探す時、両派から何人かのセラピストを見つけて、お試しセッションを行ってみるのがいい。

ここで、セラピスト側も様々な要素(症状、セラピー経験の有無、患者の性格、セラピーの目的等)を加味し、どのメソッドが最適であるかということをチェックする。それは、この症状とメソッド、セラピストと患者のフィッティングが、最終的にセラピーの効果を大きく左右するため。また、健康保険適用の場合は特に、最も効果が期待され、経済的な方法を選ぶことが義務化されているためである。

自分でセラピストとのやりとりがしっくりくるか見るのもそうだが、セラピストもプロの目線からかなり厳しく見るので、そんなに心配は必要ない。最終的には自分にマッチしたセラピストが見つかるはずだ。始めてから合わないと分かった際にはセラピストや手法を替えることができるので安心だ。

次回は、予約の取り方からセラピーの流れなどの実際の手順を紹介する。少しでも役に立つなと思ったら、ぜひフォローをお願いします。

注釈

1 最近4つ目としてシステム論的療法も保険適応となったが、ここでは歴史の長い3つの療法に限定する

2 なぜわざわざ分析家というのか。Psychoanalytiker(分析家)はPsychotherapeut(精神療法士)よりもさらに長く厳しい訓練を受け、追加で分析家としての国家資格を別途取得している。ただ、ほぼすべての分析家は同時に精神療法士である。大(分析家)は小(精神療法士)を兼ねる。つまり、分析家は(2)精神分析的深層心理療法と(3)精神分析的療法の両方ができる。

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