見出し画像

寂寞(詩)

波が来て、君の足跡をさらってゆく
秋が来て、君の面影をさらってゆく
僕は一人、誰もいない砂浜に寝そべって
うろこ雲の姿態を目で追いかける
ああ、夏にはあれほど賑わっていた海よ
人は皆、どこに行ったのだろうか
そして君は、どこに行ったのだろうか
もうすぐ僕は起き上がり、足を砂に取られながら
君のいなくなった部屋に帰るだろう
波の音も、君の声も消えた一人の部屋に
秋のような、空のような
寂しい一人の部屋に
自販機で買ったコーヒーの温もりだけを連れて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?