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森沢明夫『虹の岬の喫茶店』第二章『《夏》ガールズ・オン・ザ・ビーチ』を読んで

第一章では親子が絆を深めるストーリーだったが、第二章は雰囲気が変わり、就職が決まらないで焦っている大学四年生、今泉健が主人公。

夢という夢もなく、就職を決めることだけが人生の目的になっていたイマケンの心を動かしたのは、今回は悦子さんだけでなく、浩司さんとみどりちゃんの二人だった。

「迷ったときはロッケンロールな道を行け」という浩司の言葉と、画家という成功するかどうかわからないフリーランスの道を選んだみどりの行動。そして、最後のひと押しが悦子さんの「夏と恋と『ガールズ・オン・ザ・ビーチ』はセットになっている」というセリフ。

ツーリングという現実からの逃げを選んだイマケンは、現実を遠くから見たからこそ、自分を客観視できたし、自分の夢について真正面から考えられるようになった。

最後にみどりちゃんに物書きになりたいと伝え、遠回しながらみどりちゃんへの思いも告げた。(本人は遠回しに言ったつもりでも、みどりちゃんにはストレートに伝わる不器用な告白だったが。)

私の中では、「夢を追いかける勇気」と「夢を追いかけない勇気」について語り合う場面が一番印象に残った。

私自身、昔から本を読むのが好きで、自分でも書いてみたいという思いはどこかにあった。しかし、兄は小さな頃から小説家になりたいと言っており、小、中学生のときの読書感想文でも、いつも賞をもらっていたので、自分の夢は封印してしまったような気がする。それ以外の夢も持たず、会社員という道を歩いてきたが、五十歳を過ぎて改めて小説家になりたいという夢を思い出し、書き始めた。夢は持っているだけで幸せなのかもしれないが、やはり、「夢を追いかける勇気」が持てなかった自分が、ようやく夢に向かって行動し始めたことは、私の大きな自信となるとともに、有意義な毎日を送れているというモチベーションにも繋がっている。

昨年、幻冬舎ルネッサンス新社より自費出版で処女短編集を出すことができた。来年六月には第二短編集を、これも自費出版ながら刊行することで話が進んでいる。

次の夢は、自費ではなく本を出版することと、長編小説を書くこと。もうひとつは虹の岬の喫茶店のような場所を見つけること。

最後に、店の全貌が少しずつ明らかになっているので、これからの進展が楽しみだ。

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