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【詩あそび七十二候】雷乃発声~らいすなわちこえをはっす



(鳴り響いていたそれは

     始まりのその瞬間からずっと、ずっと)

おしまい、が怖くて
母の布団に潜り込んだ
薄っぺらい母の身体は
いつもあちら側を半分透けさせて
怖がることはないのだよ、
ぽきりと折った指は不思議に甘く
芽生えの季節はいつも
暗い甘さに満ちていた

──ああ、恐れることはないのだよ
それは朝の台所で刻まれる
一かけらの人参のようなもの
切り口からはひかりが溢れだし
ひとひら、ひとひら

お前だって終わらせながら
生まれてきたのだ
眠り続けていれば夜は
夜のままだろう
私たちは目覚めてしまう
たとえ光が
差し込まぬ朝でも

一閃、夜がまた震え
固く閉ざしたまぶたの上に
誰かの祈りの言葉、聞こえてくる

*
闇よりも深く水よりなお昏く眠れ、祈りよその切先で

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