【詩あそび七十二候】/雀始巣~すずめはじめてすくう
いのちの終わりは悪だ、と
初めに口にしてしまった人は
季節をどう渡って行ったのか
どんなに固く閉ざしても
芽生えてしまう
春、
溶けない記憶を苗床にして
今日もひとつ命が芽吹く
何もかもをきっと
忘れてしまえたのだろう
撃ち落されたあの子の形に
すこし窪んだ大地の色を
今では誰も語れぬように
なにかを一つ終いにしながら
またひとつ、どこかで始まる
春。ひかりは止めどなく溢れ、あふれて
──忘れていないよ
あなたと言う名の日々がいつか
わたしの傍に在ったこと
冬の名残を巣ごもりに
抱いて数える風、その先にまた光る
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