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トンニャン過去編#83 ニコラス・ボニファキウス(原題「ファイヤーバード」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ピエールの巻」の次。「ニコラスの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

リオールはコーラを抱きしめると、また唇を重ねてきた。コーラはリオールの腕の中でかすかにうごめきながら、何が起こったか理解できないでいる。
「どうして?私を憎んでいたんじゃないの?私を殺す為に来たんでしょう?」
コーラが小さくつぶやく。リオールは腕の力をゆるめると、じっとコーラを見つめた。
「そう、母上も妹達も、皆憎んでいる。でも、俺は違う。俺が憎んでるのは、きみの愛しているルシファーだ。母上や俺達を捨てて、コーラとの生活に没入している父上が憎い」
リオールはふっと笑うと、コーラを腕から解き放した。
 
「もう、コーラは俺のものになったんだ。気取る必要もないな」
リオールは、地面に腰を下ろすと、促すようにコーラを見上げた。コーラもおずおずと、リオールの隣に座る。
「俺はね、コーラ。きみが生まれた時から、ずっと見てきた。ずっと、好きだったんだ。いずれ一人前の魔女になったら、俺の力で悪魔に昇進させて、妻にするつもりだった」
リオールはコーラに向き直った。
「ところがどうだい。その愛するコーラを父上が奪ったんだ。そして俺達をないがしろにし、コーラも不幸にしている。許せない!」

リオールは、コーラに再び口付けた。コーラは抵抗しなかった。
「コーラ、きみが魔界を抜け出した時、チャンスだと思った。父上の目の光るところでは、手を出すのは無理だ。・・・そして、やっと良いトリデを見つけたのさ」
リオールは倒れているニコラスをチラリと見た。
「コーラ、俺の妻になるんだ。父上の所では苦しむばかりで先が見えない。今約束したとおり、きみの命は俺のものだ。俺に・・・ついてきてくれるね?」
 
その時、つむじ風と共に大魔王ルシファーが現れた。
「父上・・・!」
リオールはコーラを強く抱きしめた。
「もう遅い!コーラは、俺のものだ!」
ルシファーはコーラを見た。
「同意したのか?」
コーラがそれに答える前に、リオールが声を上げた。
「父上にコーラを幸せにできるんですか?コーラを妻にすることができるんですか?いくら父上でも、そこまで母上や俺達を欺けないでしょう?」
「リオール・・・」
ルシファーはリオールを見つめた。

「おまえは本気でコーラを?」
「えぇ、本気ですよ。母上や妹達は反対するでしょうが、俺はきっとコーラを妻にします」
ルシファーは、今度はコーラに目を移した。
「わたしの気持ちは変わっていない。しかしコーラ、おまえがリオールの妻となる事を望むなら、わたしは許そう。」
コーラの顔は、涙でクシャクシャになっていた。ちょうど一年前、コーラはルシファーに、今リオールがしているように抱かれて、愛を誓ったのだ。しかし、どんなに愛しても結ばれない愛である。しかも、他の者に殺したいほどに憎まれ、魔界の誰もが認めていない愛である。
・・・ルシファー様にはいつまでも大魔王として、魔界を統べる者として、いてほしい。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#83 ニコラス・ボニファキウス(原題「ファイヤーバード」)

※このシーンもなぁ。2006年頃に描いた続きのトンニャンシリーズ。こんな展開になるとは、1970年代当時は、全く知らなかった私です。
悪魔皇太子妃コーラこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/ne59ad1154c9a?magazine_key=mf04f309d9dfc

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※Amazon、書籍は入荷したようです。他の通販も、書店も、または電子書籍あります※

次回トンニャン過去編#84 ニコラス・ボニファキウス へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n31fc4347010f

前回トンニャン過去編#82 ニコラス・ボニファキウスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6e7abc48b50b

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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