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ある独白#16

いつものように幾晩も家を空けた日の夜中、

耀子は酔っ払って帰って来た。

耀子が飲んで帰るのは珍しいことではなかった。

時には酔って前夜のことを覚えていない時もあり、

竜次はいつも一晩中耀子を介抱した。

だが、その日はいつもと違っていた。

酔い方が普通ではなかった。

たいていは酔って気分が悪くなることはあっても、

もどした後にさらに家で飲むことはなかった。

そのまま眠ってしまうのが常だった。

ところが、その日は具合が悪くなろうが、

飲むのをやめようとはしなかった。

それどころか どんどん飲もうとする。

それでも竜次はよく介抱した。

本来命令にそむくことがないロボットでありながら、

耀子の飲み続けるのをやめさせようとした。

飲むほどに耀子は荒れ、泣きわめき、暴れた。

竜次は子供の相手をするようになだめすかし、

耀子を気づかい続けた。

日差しがカーテンのすきまから差し込んできた。

耀子は眩しさで顔をゆがめた。

重いまぶたをやっと開けると、きちんとパジャマに着替え、

ベッドに寝ている自分がいた。

次に目に入ったのは、耀子のひざ元で

ベッドに顔をうずめて眠っている竜次だ。

基本的にはロボットは眠らないが、

竜次は機能を一時停止して休むことができた。

耀子がカーテンに手をのばすと、竜次は目を覚ました。

正確には機能活動再開した。

「起しちゃった?ごめんね」

「いや、何か飲む?」

二日酔いの時の耀子は、いつも夕方ころまで食べない。

野菜ジュースやスープ程度のものしか口にしない。

しかし、今日の耀子は飲みたいものが見つからない。

「水・・・かな」

竜次はすぐに水を持って来た。

耀子は飲み干すと、カーテンを開くのをやめて

もう一度ベッドにもぐりこんだ。

「ごめん、気持ち悪いから今日研究所休むわ。

電話しといて、また寝るから。」

次に目覚めた時、夜になっていた。

耀子が目を覚ますのをわかっていたように、

竜次が梅干し入りのおかゆを作って持ってきてくれた。

耀子は少し口をつけると、竜次に顔を向けた。

「しばらく研究所休むわ。

悪いけど、明日休職届け出しといて。

・・・そうね、理由は、長期旅行にでもしといて」

耀子はおかゆをさらに少しだけ食べると、

半分以上残して、また眠ってしまった。

ありがとうございました(;´д`)

ある独白#16我が永遠の鉄腕アトムに捧ぐ


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かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

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#17へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nc44d9b51dfdd

#1最初からは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb5ab031cb177

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