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トンニャン過去編#21 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「トンニャン・・・。あの時の、あの二年前に公園で会ったトンニャンよね?」
「そうよ。覚えてくれていてうれしいわ、アン」
アンとトンニャンは、セカンダリースクールの四~六年生の校舎裏で話している。
 
この学校は、セカンダリースクールの一~三年の校舎と、四~六年の校舎、そしてシックスフォームの校舎が離れて建っている。
いわゆる中等部と高等部と、プラスアルファで二年間のシックスフォームが、同じ敷地内に離れてキャンパスを持っている、と考えていい。
 
「先に一つだけ確かめたい事があるの。チェリーとコーラは、トンニャンの仲間なの?」
「どうかな?彼女達が何か、もう見えてるんでしょ?」
「えぇ、チェリーは天使で、コーラは悪魔ね」
「天使と悪魔が仲間なはずないでしょ?」
アンは下を向いて、小さく首をかしげた。
「そう。それがわからない。それにトンニャン、あなたが誰かもわからない」
 
「あれから、どこに行っていたの?」
「東よ。」
「東?」
「そう、気になる事があって・・・。そしてまた西に戻ってきたの」
 
「それよりアン、あなたが見えるのはわかるけど、あんなものを見て、私が怖くないの?」
アンはぶるぶると身体が振れるほど首を振った。
「怖いなんて、助けてもらったのに。もしあのまま、あの裂け目がこの世界と繫がってしまったら、私は今、生きていないかもしれない」
「そのとおり。アンみたいな人間が、たまにいるのよね。だから、また会いたくなったのかな?」
「私に会いたかった?」
 
トンニャンはあの時、長い髪を結い上げチャイニーズのような髪型をしていた。でも、今は髪は短くショートカットにしている。
そして、もちろんチャイナドレスではなく、アン達と変わらぬ学生らしい服装だ。その細い身体にさりげないTシャツもジーンズも、よく似合っている。
そしてその横顔は、少年のようにも見える。
 
「見つめすぎ、アン。今にもキスでもしそうだわ」
アンは、ふらっとトンニャンの身体に倒れかかった。
トンニャンがそれを抱きかかえるようにささえる。アンはそのままその唇をトンニャンのそれに重ねた。
「アン・・」
「ダメ、離さないで。このままでいて」

トンニャンはアンを抱きしめたまま、フッと息をついた。
「困ったわね。私が女だってわかってる?」
「わかってる。でも、あなたは女でもないはず」
「見えすぎよ、アン」
「私、別に女の人が好きなわけじゃないのよ。トンニャンが好きなの。
初めて会った時からずっと忘れていなかった」

(トンニャン過去編#6~#10 アン・バスカント(原題「鳳凰」)参照。
https://note.com/mizukiasuka/n/n33eb617ac3bc?magazine_key=me347e21d7024

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#21 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「チェリー・エンジェル」の続きです。

トンニャン過去編#22ネッドグラウンドへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n1a757ee2d9f6

トンニャン#20 チェリーエンジェルこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/na77384d0c112

#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d


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