トンニャン#4 大天使ミカエル(軍神マルス)
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ミカエルの巻」のような意味。話の位置は、アスタロト公爵の#5と#6の間のお話です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「悔いているのか?あのルシファーが裏切った時、先頭に立って戦い、ルシファーと剣を交えた事を」
ミカエルは大きく目を見開いたまま顔を伏せた。
「一軍の将が裏切れば、副将であるミカエルが応戦するのは当然の流れ。
あの時、もしルシファーが裏切らなければ、天帝の圧倒的な勝利だったな。
悪魔を一掃出来たかもしれない。だが、まさかの裏切り。天帝は慌てたに違いない」
「あの時の事は、もう・・・」
「・・・ずっと苦しんできたのだろう?
対の天使であるルシファーに剣を向けた事を。忘れてはいないぞ。
おまえの剣がルシファーの翼に刺さり、その傷が元でルシファーが地に墜ちていった事を」
あの時、ルシファーは一瞬ためらったような気がした。本来剣を受けるべきは、このミカエルだったかもしれない。
ルシファーの一瞬のためらいが、お互いの立場を逆転させ、ミカエルの剣がルシファーの翼を貫いた。
ルシファーが傷ついた翼の為に墜ちていく時、剣を持ったままのミカエルも供に墜ちようとした。
しかし、天帝の大いなる御手がミカエルのみを救い上げ、ルシファーは地に墜ちていった。
神の書である『神書』、悪魔の事典である『魔典』には、ほぼ同様の記述がある。
『かつて神と悪魔が、善と悪をかけて争った。
天帝の軍が勝利に近づいた時、暁の子ルシファー・一軍の将でありながら悪魔に寝返り、その剣を天帝に向ける。
副将ミカエルの剣、その翼を貫きルシファー堕天使となり地に墜ちる。
その時、天帝の軍と悪魔の軍の戦場に、炎に包まれた一羽の鳥が現れた。
それは鳳凰、または不死鳥と呼ばれる炎の鳥だった。
鳥は戦場の中央に降り立つと、炎そのものになった。
天帝の軍、悪魔の軍、ともにしばし争いを止め、その炎に見入った。
やがて炎は一人の美しい少女の姿になった。
「わたしはトンニャン。争いを止めよ。これより天帝は天、悪魔は地を治めよ」
天帝も悪魔もこの申し出を受け入れ、以後、善と悪は、人の心の中で常に争われる事となった』
「もう悔やむな。おまえが天帝を選び、天上界で四大天使と呼ばれる事を選んだように、ルシファーは天帝を裏切る事を選んだ。
大魔王ルシファーとして、魔界に君臨する事を選んだのだ。
たとえ対の天使といえども、同じ道を歩むとは限らない。供に、自分の信じた道を歩いてきただけではないのか」
「それでも、我が子クビドまでも、わたしと同様に、対の天使と対峙させる事になろうとは。
何故ここまでして、わたし達は戦わなくてはならないのでしょう」
「それもきっと、生まれた時から決まっていたことなのだ」
「ルシファーとわたしが、対の天使として生まれた時から、決まっていたと?」
トンニャンはゆっくりと頷いた。
「ルシファーは、我が子クビドと、リオールが対の天使である事を、当然知っていたのでしょうね」
「知っていただろう。むしろ、クビドと対等に戦える力があるのは、リオールしかいないと、思っているかもしれない」
ミカエルが拳を震わせて、椅子のひじ掛けを思い切りつかんだ。カタカタと椅子が音を立てて震えた。
「では、来たるべき戦いの為に、リオールを生み出したと?」
「おそらく・・・」
「何という事だ。自分の子供まで戦いの道具に使うとは。ルシファーには、もう心というものが無いのでしょうか」
続く
ありがとうございましたm(__)m
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