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トンニャン#17 悪魔皇太子妃コーラ

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「コーラの巻」のような意。話の位置は、前回の「クビドの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「何だよ、これ。
おまえは女になっても、男になっても、人間も悪魔も天使も。皆、必ず女達の取り巻きがいるな。
まるで人間の世界の、芸能界のどっかのスターと同じだな」
アシュラは一気に話すと、イラつくようにして、席を立った。

トンニャンは、ふーっと息をついた。
「アシュラ、座れよ。これで、コーラもチェリーもフィフティフィフティだろ?」
 「わかったわ。私、納得するわ」
 チェリーは夢見心地でつぶやいた。コーラは不満そうにしていたが、やがてしぶしぶ了解した。
 「俺は納得してないぞ。いい加減物分りがいいのも、嫌になった」

 トンニャンは立っているアシュラに声をかけた。
 「アシュラ、座れって。コーラもチェリーも、わたしが少女だった時の古い友人だ。
確かにあの時も、人間の少女の取り巻きもいた。否定はしない。
女になっても、男になっても、どの時代もどの世界でも、必ず誰かに愛を求められた。
でも、全部に答えたわけじゃない。それは一番よくわかっているだろう。
コーラも、チェリーも、誤解されるような真似はよせ。キスぐらいいつでもしてやってもいいけど、もう、わたしもひとりじゃない」

 
コーラとチェリーは、ふくれ面してトンニャンから少し離れ、大理石のテーブルに用意されたハーブティーに手を伸ばした。
 「ミントティー。トンニャン、私の好み覚えていてくれたのね」
 とコーラ。
 「レモングラス。あの頃も、よく三人でハーブティーを飲んだわね」
 チェリーはティーカップを両手で持ちながら、立っているアシュラに手招きした。
アシュラはまだ、心が荒れているようだったが、ゆっくりと回り込むようにして、再び席に着いた。

「昔ね、三人で同じ部屋に住んでいた頃、トンニャンはたいていブラックコーヒーか、ハーブティーならラベンダーしか飲まなかったの。
コーラはコーヒーには黒いシュガーを少しだけ入れ、ほとんどアメリカンで。
私は、グラニュー糖とミルクをしっかり入れて飲んだわ。懐かしい」

「三人でいろんな事した。いろんな事あったわ。チェリーはすでにクビドと婚約してたし、私はいろいろあったけど・・・」
コーラは一度言葉を切った。

「トンニャンがハイスクール以前に出会った子で、アン・バスカントという子がいてね、女の子でボーイフレンドもいるのに、トンニャンにぞっこんでね」
「ほら、コーラ。ハイスクールでは、あのミススクールのエレン・ピースもトンニャンが好きだったわよね」
「そうそう、アンとエレンはすれ違うと目から火花が散ってたわ」

アシュラは横向きに座りながら、あきれている。
「トンニャンは、女だったんだろう?倒錯の世界か?」
コーラもチェリーもちょっと口を曲げて笑いをこらえているような顔をした。

「倒錯の世界なら、今のトンニャンとアシュラの関係はどうなるの?」
「コーラ、言いすぎよ。
アシュラ、気を悪くしないで。ハイスクールじゃ、女の子が女の子に憧れたりする事、よくあるのよ。
あの時は私もコーラも子供だったから、よくわからなかったんだけど、後で考えると、私達二人も、アン達と同じだった。
一緒に住んでて、近くにいすぎたから、自分の気持ちに気づかなかったのね」
チェリーは懐かしい時代をいとおしむように、ゆっくりとレモングラスティーを口に運んだ。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#17 悪魔皇太子妃コーラ


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