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ある独白#15

必要・・・。

耀子の受話器を持つ手が力をなくし、

返事もせずに切った。

その日、耀子は何日かぶりで帰宅した。

リュージは、相変わらず無表情で迎えた。

リュージ、ここに座って」

耀子はダイニングのいすに座ると、

リュージに真向かいに座るよう指示した。

「お願いがあるの。

私、今までリュージに甘えてきたわ。

リュージは使役ロボットなんだから、あたりまえだと思ってきた。

でも、この ひと月は こたえた」

リュージはうつむいて耀子の話を聞いている。

「私にはリュージが必要だわ。

家の中のことは もちろんだけど、話し相手にもなってほしい。

たまには 一緒にでかけたいし。

でも、外に出ればリュージの大学の時の友達にも

会ったりすることだって、きっとこれからもある。

そこで相談なんだけど。」

リュージは少し顔をあげた。

「今まで通り家事はやってもらいたい。

私は仕事持ってるしね。

今は研究生だけど、いずれ博士号も取りたい。

父親としてのパパは最低だけど、研究者としての葛城博士

尊敬しているし、目標にもしているわ。

だから、都合のいい言い方だけど、家のことは

今のままリュージにお願いして、でも、あなたは今日から

家でも、どこでも、葛城竜次、つまり私の弟として

ここにいてほしいの」

リュージは顔をあげて耀子を見つめた。

「だからね、もし外であなたの友達や知り合いに会ったら

私を姉として紹介してちょうだい。

今日から私達は家族よ。

わがまま言ってもいいわ」

リュージのサーチライトの目がチカチカ点滅した。

「でも、わがままなのは たぶん私の方かもね」

耀子がそこまで言うと、リュージは突然両手で耀子の手を握った。

姉さん

その瞬間から、リュージ耀子の弟・葛城竜次として

耀子と二人で暮らしてゆくこととなった。

耀子リュージ葛城竜次と認め、として生活するようになって

二人の関係は、ますます親密になっていった。

耀子にはもう竜次ロボットであることなど、

取るに足らないことに思えた。

竜次はときどきわがままを言ったり、甘えたり、

そして甘えさせてくれる。

二人は連れだって買い物に行き、

時々出かけたり、旅行したりした。

人間と寸分違わない竜次は共同浴場でさえ、

ロボットと気づかれなかった。

姉弟である二人は、同じ部屋に泊まり

夜遅くまで話をした。

そんな生活が何年か続き、

耀子も三十路にかかる頃になった。

仕事には変わらず情熱をかたむけ、

研究室に泊りこむ時も若い時と同じく

ひんぱんにあった。

竜次は、そんな時もとして家事をこなしながら、

耀子を待っていた。

ありがとうございました(*^_^*)

ある独白#15我が永遠の鉄腕アトムに捧ぐ


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#16へ 続く
https://note.com/mizukiasuka/n/neb895332fba1

#1最初からは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb5ab031cb177



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