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トンニャン#45 太陽神アポロン

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「アポロンの巻」のような意。話の位置は前回の「リリスの巻」の次、書籍化した「阿修羅王」の1~3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」(インドの神様編)の続きとなります。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

チェリーは、アポロンの様子を観察するように見つめている。
「おにいさま、ブラックエンジェルは、パワーズ(能天使)に捕まって、子供と引き離され、その時子供は、魔界に落とされたみたい。
その後、ずっと暴行に耐えながら、最後まで決して、その子供の父親の名を明かさなかったというわ」
暴行という言葉をチェリーが口にした時、ほんの少し、アポロンの表情が動いたようだった。

「そして、そのまま堕天使になったの。それから・・・」
「それから?」
「彼女は、子供を生んだことも、自分が誘惑した天使長が誰かも、覚えていないらしいの。思いだそうとすると、激しい頭痛に襲われるみたい。
それに、その好きだった上級天使の事も、思い出そうとすると、身体に痙攣が起きるらしく・・・」

「・・・記憶を操作されたか、封印されていると?」
「たぶん。だから、その子供の父親が、その誘惑した天使長なのか、好きだった上級天使なのか、全くわからないの」
アポロンは黙ったままチェリーから目を背けている。
「でも、誘惑した天使長と、好きだった上級天使が、同一人物という、可能性もあるわよね」
アポロンが少しだけ、ピクリと動いたような気がした。

「チェリー、わたしは仕事の残りがある。もう戻らなくては」
「おにいさま、あとひとつだけ」
「何だ?」
「その魔界に落とされた四枚の翼を引きちぎられた子供なんだけど」
「その状態では生きてはいないだろうな」
チェリーは首を振った。

「生きているのか?」
「えぇ、それが・・・」
「どうなんだ?」
アポロンはせかすように、チェリーを見つめた。

「それが、その・・・。その子は生き延びたの。そして魔女となり、成長したの。自らの記憶と、四枚の翼の跡を封印してね」
「自分で封印したのか?」
「そのようね。だから、最近まで、本人も自分が堕天使だって知らなかったのよ」

「今は?」
チェリーは兄の顔をチラリと見て、目を伏せた。次の言葉へのためらいからか、何かを恐れているようにも見えた。

「今は、どうしているんだ?」
繰り返し、アポロンが聞いてくる。チェリーは、思い切って口を開いた。
「悪魔皇太子妃となったわ」
「悪魔・・・皇太子妃?・・・コーラなのか?
あのルシファーの息子・リオールの妻の、コーラなのか?!」
アポロンは拳をふるわせたまま、絶句した。

原作 二〇〇六年平成十八年十月九日(月)
改訂 二〇〇九年平成二十二年三月十一日(木)
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#45 太陽神アポロン

※「トンニャン過去編」で書いているように、「ふしぎなコーラ」魔女コーラは、1960年代後半に生まれた、ドラえもんタイプの漫画でした。
1970年代に書き直し、チェリー・トンニャン・コーラの人間界での高校三年間をレポート用紙に書きました。
その続きは20年以上の時を経て、「トンニャン」の物語となった時は、未来であり、異世界のお話となっていました。
もちろん、子供の頃の私は、コーラがこんなに深い過去を持っていたなんて全く知りませんでした。

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャンが全部読めるマガジンはこちら
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc

次回トンニャン#46 大天使ラファエルへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n8b21a7193e14

前回トンニャン#44 太陽神アポロンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nbd467ba8a6ea

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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