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トンニャン過去編#81 ニコラス・ボニファキウス(原題「ファイヤーバード」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ピエールの巻」の次。「ニコラスの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

目覚めると、チェリーは自分のベッドで寝ていた。トンニャンが運んでくれたのだ。
「あら、チェリー起きたの?」
そこには、もう女であるトンニャンがいた。チェリーは落胆を隠せなかった。
「なんて顔してるの?」
トンニャンはチェリーに顔を近づけると、耳元でささやいた。
「私が男になった事は、コーラには内緒ね」
 
 
その日もコーラは一人で学校へ行った。教室はがらんとしていて、まだ誰も来ていなかった。コーラが椅子に座ると、後ろから影が近づいてきた。
「おはよう、コーラ・デビル」
コーラはため息をつく。
「おはよう、ニコラス・ボニファキウス」
彼はコーラの肩に手を置くと、顔を近づけてきた。
「やめて!」
コーラが椅子から立ち上がる。
「ニコって呼んでくれって言ったのに」
ニコラスはまた顔を近づけてくる。コーラはニコラスをギリリとにらんだ。
「ニコラス、私はあなたより一つ年上なのよ。あなたには、ヘスター・カエサルという相手がいるでしょう。・・・迷惑なのよ」
コーラはプイと横を向いた。
 
「そんなに愛してるの?妻子のいる相手なのに?その妻も、子供達も、皆きみを憎んでいるのに?」
「何・・・言ってるの?何の事か、わからないわ」
ニコラスは急に笑い出した。
「とぼけるのはおよしよ。まだ、僕が誰かわからないんだね。だから、いつまでたっても一人前の魔女になれないのさ」
コーラは思わず後ずさった。
「あなた、誰?何の為に・・・」
それから、ハッとしたように唇を噛むと、スーッと血の気が引いてきた。
 
「リリス様やお子様達は・・・そんなに私を憎んでいらっしゃるの?」
「当たり前だろう。父上を奪った女だ。あれから父上は、一度も僕達の城に戻ってきた事はない」
コーラはゆっくりと震えながら顔を上げた。
「父上と言ったわね?ルシファー様を・・・」
ニコラスはくるりときびすを返すと、教室を出て行った。
「・・・とりついているんだわ、ニコラスに。王子様の誰か・・・?」
殺されてもいい。所詮は結ばれない愛なのだ。いっそ、殺された方が・・・。
 
 
昼休み、コーラはニコラスを訪ねて行こうとした。しかし、その途中、肩を叩かれて振り返った。
「トンニャン・・・チェリー・・・」
トンニャンは微笑んでいたが、チェリーは眉をひそめてきつい顔だ。
「コーラ、こっちにいらっしゃい!」
コーラはチェリーに無理やり手を引かれて、校舎裏にやって来た。
「コーラ、死に急ぐのはやめて」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#81 ニコラス・ボニファキウス(原題「ファイヤーバード」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

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https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
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次回トンニャン過去編#82 ニコラス・ボニファキウス へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n6e7abc48b50b

前回トンニャン過去編#80 ピエール・オーギュスタンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n481fb683030c

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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