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ある独白#19

「いや、その・・・出張があってさ、

半年海外に行ってたんだ。そこで彼女と・・・・

倖恵(さちえ)と知り合って、あっちで入籍した」

「え!」

と声を上げたのは、座ろうとしていた耀子だ。

「結婚したってこと?」

健吾はまた頭をかき、倖恵はうつむいた。

矢継ぎ早やに耀子が馴れ初めを聞くので、二人は困ったように

うつむき、健吾は汗をかきながら説明した。

「それで、結婚披露パーティーをしようと思うんだ。

もし良かったら、二人で出てくれないかな。

堅苦しい感じじゃないんだ。

倖恵を友達に紹介するためというか・・・。

立食で席もおおまかにしか決めないし、

ごちゃごちゃした感じになると思うけど、

その方がみんな気楽かと思って。

・・・耀子さん竜次、来てもらえないかな」

竜次は黙っていたが、耀子は即座に返事した。

「もちろん、出席するわ。

竜次の大切な友達のパーティーだもの」

帰り際、健吾は小さく竜次にささやいた。

そして二人はハートマーク全開で帰っていった。

竜次が後片付けをしていると、耀子が近づいてきて

肩にもたれかかった。

竜次健吾さん、帰る時何て言ってたの?」

「・・・幸恵さんには僕のこと、ロボットだって言ってないからって」

「へえ」

耀子は後片付けの手伝いをしながら、少し考えていた。

洗い物終えて夕食に取りかかる頃、

耀子はダイニングのカウンターに座って竜次を見つめていた。

「ね、竜次。すごくおしゃれしていこうね、健吾さんのパーティー。

姉弟っていうのはちょっと不満だけど、しかたないわ。

竜次と二人でパーティーに行けるなんてうれしい、夢みたい!」

耀子の心は、恋人と出かけられることの方に夢中になっていた。


耀子竜次が『恋人』として生活するようになって、瞬く間に十年が過ぎた。

しかし、その十年はロボットにとって粛清の十年だった。

RP7型ロボットはあまりに精巧に出来すぎていた。

人間と見分けがつかないだけでなく、人間より人間的で、

優秀で優しく思いやり深く、忠実で争うことなく、ひたすら

愛するだけのこのロボットに一部の人間達が脅威を感じ始めたのだ。

人によっては家族同然に、妻であったり夫であったり、兄弟姉妹、

子供、親、祖父母・・・さまざまな形で彼らを受け入れた人々がいた。

しかし、その人間らしさゆえ、彼らはいつか人間に取って代わろうと

するのではないかと、怖れられ始めたのだ。

彼らを大切に思う人々はこの考えに反対した。彼らを守ろうとした。

だが、人間というものは所詮、強欲で臆病な生き物だ。

自らの保身しか考えない愚か者ばかりだ。

この地上に君臨して幾星霜、この身が少しでも危うくなることを

見逃すことはできない。

やがて、RP7型ロボットの製造中止、廃棄処分

全世界で決定した。

ありがとうございました(;´・ω・)

ある独白#19我が永遠の鉄腕アトムに捧ぐ


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#20へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n0a3605a06faa

#1最初からは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb5ab031cb177



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