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トンニャン過去編#64 フェニックス(原題「フェニックス」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ミセス・ボニーの巻」の次。「フェニックスの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです

トンニャンは、何やら淋しさを覚えていた。
「とうとう一人になってしまったわ」
広いマンションの一室で、ふとつぶやく。いつのまにかトンニャンにとって、コーラもチェリーも、かけがえのないものになっていたのか。
ルシファーやミカエルとは違った意味での、女同士の友情。そんなものに出逢えるとは。生きるのも、悪くない。
 
「もうすぐ生まれる。新しい命。人間の歴史はこうして繫がってゆく。いつまでも、繫がってゆく」
 
**
 
 
トンニャンはアン・バスカントと、二人が初めて出会った公園に来ていた。
「アン・・・しばらくのお別れ」
「また、会えるの?」
つい先日、ミセス・ボニー・ガンは無事女の子を出産していた。そのお祝いを届けた帰り、二人は友人達の輪から抜けてこの公園にやって来た。
 
「覚えてる?トンニャン。ここで、ネッドを助けてくれたわよね」
春のやわらかな日差しの中、アンが噴水のふちに手をかける。
トンニャンはクスリと笑った。
「忘れるはずがない。人間のお嬢さんで、あれほどハッキリ見えるのも珍しい。
もちろん、見える人間には今までも出会ってきたわ。でも、アンは特別ね」
アンもふふっと笑う。
「でも、驚いたわよ。あの悪魔の群れを焼き尽くす炎を目の当たりにするなんて。小さい時からいろいろ見えてはいたけど、時空が割れるなんて、初めての経験だった」
 
トンニャンとアンは、公園の噴水のふちに腰掛けた。
「そりゃあ、いつも割れてたら大変だわ。こっちだって手が足りないわよ」
「そうね」
アンがまた笑う。
 
「いつ?」
「え?」
「今度は、いつ来るの?」
トンニャンが淋しく笑った。
「・・・今度が最後よ」
アンの顔色が変わる。眼を泳がせて、噴水の水にその身を映す。
 
「トンニャン・・・いやよ。最後なんて」
トンニャンがアンを抱き寄せた。アンはトンニャンの腕の中で震えている。トンニャンが、しかし、首を振る。
「アン、前にも言ったわ。・・・私はトンニャンだって」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#64 フェニックス(原題「フェニックス」)

※アン・バスカントとトンニャンの出逢い。これがトンニャンのことを初めて書いた時の作品。確かにアンは初めから見えていました。この物語では、見える人は、たくさんは出てきません。興味を持つ人は多いけれど。
トンニャン過去編「アン・バスカント」こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n33eb617ac3bc?magazine_key=me347e21d7024

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https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
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次回トンニャン過去編#65フェニックスへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n1e733deacc84

前回トンニャン過去編#63 フェニックスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nf2d31f71f88e

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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