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トンニャン過去編#35 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

それからまもなく、チェリーとコーラはトンニャンを自宅マンションに呼び出した。トンニャンの正体が知りたい、という焦りがあった。
「トンニャン、あなたは何者?何故私が好きな人の事を知っているの?それが誰かもわかるの?」
トンニャンはコーラを一瞥すると、二人の前に二冊の本を置いた。
それは神の書である神書と、悪魔の事典である魔典だった。
「これは?」
「中、読んでみたら?」
トンニャンがそう言うと枯葉が彼女を包みだした。

「私は気になる事があるから、東に行って来るわ。しばらく帰らないけど、転校した事になるから」
枯葉はトンニャンを完全に包んだ。
「コーラ、あなたの好きな人って魔界を統べる者よね?」
コーラは息を飲んだ。
「チェリー、あなたは愛の天使の婚約者」
チェリーも驚きを隠せない。
やがて枯葉は風に乗り窓の外へと流れてゆく。
「トンニャン、あなたは誰?」
「・・・火」
かすかに声が聞こえた気がしたが、それも風の中に消えていった。
 

二人は慌てて神書と魔典を読み出した。
「これ!」
同時に声を上げる。
「・・・神の軍と悪魔の軍、傷つきて勝敗つかず。トンニャン、来たりて、これを制す」
 
「これって、私達が生まれるずっと前の事?」
「そうだよ、コーラ」
後ろから声が聞こえた。そこには黒いスーツに黒いハットをかぶった男が立っていた。
「ル・・・ルシファー様?」
「おまえがわたしに好意を持っているとは知らなかったな。さあ、コーラ、魔界に帰ろう。修行のやり直しだ」
「あ・・・あの、私」
「おまえの直属の魔王に連れ戻すように言ったら、『あのじゃじゃ馬を戻すんですか?』と嫌な顔をされてな」
ルシファーがまだ状況を把握していないコーラを立たせた。

 
「あの・・・聞きたい事が」
ルシファーはチェリーを振り返った。
「コーラは何かいけない事をしたんですか?」
「いや、何もしなかった。いい事も悪い事もね」
「・・。そ・・・それから、トンニャンを知ってますか?」
「あぁ、友人だが」
「彼女は何者?」

彼は、男でもなく女でもなく生を超越した存在。この世が誕生する以前より存在し、この世が滅んだ後も存在する
「それって・・・?」
チェリーがまた何か言いかけた時には、コーラもルシファーも消えてしまっていた。
二〇〇七年平成十九年七月十日(火)午前零時(原文一九七六年十一月)

※この時ルシファーが言った言葉が、その後のトンニャンを説明する上での定型文となりました。考えたわけではなく、するっと出て来た言葉。私の作品には、よくあることなのです。

ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#35 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

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次回トンニャン過去編#36 ルーシー・エイビスへ続く

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