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ALIFEの入門書、発売になりました。

こんにちは。ALIFE研究者の岡瑞起です。
3月16日、ALIFE(人工生命)の入門書『ALIFE | 人工生命 より生命的なAIへ』が発売になりました。

本書では、AIやALIFEの知識がない方にも、ALIFEが何であるか、どのような研究やアルゴリズムを辿ってきたか、どう役立てられるかを理解いただけるよう、わかりやすく解説しています。

◎そもそもALIFEとは?

ALIFE(Artificial Life、人工生命)とは、「人工的につくられた生物のような生命」のことを指します。AI研究者が「人工的につくられた人間のような知能」をコンピュータで実現できると考えているように、ALIFE研究者は、自然の進化が生み出すような終わりのない(=オープンエンドな)進化をコンピュータで実現できると考えています。

◎新しいアイディアやデザインをつくるオープンエンドな進化

一生懸命考えているのに新しいアイディアが浮かばない。
頑張っているのに、思うように目標を達成できない。
そんな悩みを解決するヒントを、オープンエンドな進化は提供します。そのいくつかを紹介します。

◎目的は誤った羅針盤になる

何か達成したいことがあるとき、目的を持って、現在の行動の結果が目的に近づいているかどうかを常に評価することが大切とされています。ところが、目的は誤った羅針盤になることがあります。目的を持たず、ただひたすら新しいことをする。その方が、目的を達成することにつながることがあるのです。ALIFEの「新規性探索」アルゴリズムがそれを実証しています。

◎競争を避け共存する

自然の進化が生み出してきた多様な生物をみると、その創造力は計り知れません。これをアルゴリズムに落とし込むことで、コンピュータによって、多様で、かつ高性能なデザインを次々と生み出すことができます。そのときに重要となるのが、ニッチをつくり、競争を避けて生態系の中でさまざまなデザイン(「種」に相当)を共存させることです。「品質多様性」と呼ばれるアルゴリズムがそれを可能にします。

◎新しいものをつくり出す仕組み

自然が進化を続けている、あるいは、人間がイノベーションを生み出し続けるためには、「新しいもの」をつくり出せることが大前提にあります。自然や人間にとっては、一見、当たり前に思えることかもしれないですが、コンピュータでそれを実現しようとすると、難しいことがわかります。多くのコンピュータアルゴリズムでつくられるものは、収束していき、同じようなものばかりになってしまうのです。そこで、新しさを常につくりだしている、インターネットのコンテンツ(ミームと呼ばれます)の分析から、その背後にはどのような仕組みが隠れているのかをみています。その結果、たとえば、新しいミームは「隣接可能空間」と呼ばれる領域で生まれていること、新しいものが「バズる」仕組みなどがわかってきました。

◎AIからALIFEへ

AI技術は、機械学習を中心に、効率的な学習と性能向上を実現し、この10年で大きく発展しました。その一方で、その弱点も少しずつ明らかになってきています。ALIFEは、環境の変化に適応的な技術を提供します。そのため、ALIFE技術は、AI技術の弱点を克服する可能性を秘めています。今後は、AI技術もALIFEを取り入れる方向に進むのではないかと考えています。

本書は、AIをすでにビジネスに取り入れている方や、AIの研究開発を行う研究者、エンジニア、学生の方々、こうした技術を取り入れたいと思っているクリエイターの方、そしてALIFEという分野を耳にしたことのある方にとっても、先見性をもってご自身の取り組みを発展させることに役立てていただけるはずです。

ぜひお手に取ってみてください。

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